新潟県立小出病院の布施克也氏

 豪雪地帯では、糖尿病治療中の患者であっても、屋根からの雪下ろしなどの除雪作業をやらざるを得ない。このため、糖尿病患者による除雪時の低血糖事故が危惧されている。新潟県立小出病院の布施克也氏らは、除雪に関連した低血糖事故と考えられる死亡例を経験。これを機に糖尿病患者による除雪作業と低血糖の実態調査を行い、その結果をもとに除雪作業時の療養上および服薬上の留意点をまとめ、5月16日に熊本で開幕した日本糖尿病学会JDS2013)で発表した。

 XXXX年冬。息子とともに屋上で除雪作業をしていた糖尿病患者のAさん。息子が一時的に現場を離れたことから、1人で除雪作業を続けていた。息子が外で音がしたので見に行ったところ、Aさんはアスファルトの上で頭から血を流している状態で発見されたという。緊急搬送されたものの、多発外傷のため死亡した。80歳代だった。

 長らくAさんの治療にあたってきた布施氏らは、Aさんの治療経過からみて、低血糖が落下事故に関与した疑いを否定できないと考え、対策を打ち出すために糖尿病患者の除雪作業と低血糖の実態調査を行った。

 調査期間は2011/12シーズンで、聞き取り調査で男性237人、女性197人から回答を得た。その結果、男性では除雪作業をした人は203人(85.7%)で、そのうち120人は屋根の除雪も行っていた。平均年齢は、除雪作業をした人が64.5歳、しなかった人は71.8歳だった。注目した除雪作業中の低血糖を経験した人は21人で、除雪作業をした人の10.3%と高率だった。屋根の除雪時の低血糖経験も11人で、屋根作業をした人の9.2%と高かった。

 一方、女性の方は、除雪作業をした人が122人(61.9%)で、そのうち13人が屋根の除雪も行っていた。平均年齢は除雪作業をした人が68.5歳、しなかった人が71.5歳だった。低血糖については、除雪作業中に経験した人が8人と少なくなく、屋根の除雪時の低血糖経験も1人が確認された。

 治療内容をみると、インスリンやSU薬による治療を受けている患者において、除雪作業時の低血糖経験者が多く、意識障害を経験した人もいた。

 また、低血糖を自覚した時の対処法についても明らかにしているが、「すぐに屋根を下りる」など危険な行動をとった人もいたという。

 こうした実態を踏まえ、布施氏らは、糖尿病患者が除雪作業をする際の療養上および服薬上の留意点をまとめ、次のような指導項目を策定した。

 まず一般的注意として、「1人では除雪作業を行わないこと(特に屋根除雪は必ず複数で行うこと)」「除雪作業時には必ず携帯電話を持つこと」「屋根作業では必ずヘルメットを使用すること」などを示した。

 また、糖尿病治療中患者の注意としては、「必ず食後あるいは補食後に除雪作業にあたること」「除雪作業30分ごとに1単位の補食をとること」「簡単に取り出すことのできる糖分を含む食品を携帯すること」などを盛り込んだ。なお、内服薬やインスリンについては、まず主治医の指示により対応するよう求めている。

 低血糖症状を感じたときの対処法としては、「平地であれば、その場において、あるいは屋内へ入り糖分を補給すること」「屋根の上であれば、その場を動かず、すぐに糖分を補給すること」「決して症状のあるまま屋根から下りないこと」などとしている。

 布施氏は結語の中で、「糖尿病治療患者が安全に除雪作業に従事できるためには、医療者も患者も、低血糖についての注意意識を高め、避けられる低血糖を避けなければならない」と指摘。特にインスリン治療患者には、除雪作業前の補食やインスリン減量など、個別に適切な療養指導をしていくことが必要である、とまとめた。