東京慈恵会医科大学附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科の横田邦信氏

 “Forgotten Mineral(忘れられたミネラル)”と称されるマグネシウムMg)。その慢性的な摂取不足を解消することは糖尿病の増加を抑えることにつながる――。東京慈恵会医科大学附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科の横田邦信氏は、5月19日まで横浜で開催された第55回日本糖尿病学会(JDS2012)のシンポジウム「糖尿病増加の誘因は?」に登壇、追加発言を行った。早くから日本人のMg摂取不足と糖尿病発症との関連性に着目してきた横田氏は、海外だけでなく国内でもエビデンスが積み重なってきているとし、改めてMg摂取不足への対応を訴えた。

 横田氏は、「2型糖尿病の発症は食事性Mgの慢性的摂取不足が強く関与する」という“Mg仮説”を提唱してきた。追加発言では、自説にもとづき、シンポジウムのテーマである「糖尿病増加の誘因は?」への回答を提示した。

 横田氏は、わが国において2型糖尿病が戦後に増えた要因として、戦後の食生活の欧米化を挙げる。「食生活の欧米化は、脂肪分の過剰摂取、穀物摂取量の激減という特徴を併せ持つ」と指摘する横田氏は、高脂肪食と運動不足による腹部肥満がインスリン抵抗性を招いたと説明する。その一方で、穀物摂取量の低下で食物繊維だけでなく慢性的なMgの摂取不足に陥り、これによりインスリン抵抗性の発現につながっているとした。Mg不足は、「日本人はあまり太っていなくても糖尿病になりやすいことを説明できる」(横田氏)という。

 近年、慢性的Mgの摂取不足は、アディポネクチンの低下を招き、高感度CRPやIL-6の上昇に関連していることが分かってきた。横田氏は、Mg不足のインスリン抵抗性の発現機序についてエビデンスが集積しているとし、たとえば全粒穀物の繊維およびMgを十分に摂取すると、2型糖尿病発症リスクを約35%低減するとの前向き研究の結果やメタ解析の成績が出ていることを紹介した。

 しかし、現実は厳しい。横田氏は主要ミネラルの摂取の現状を提示。平成22年国民健康・栄養調査の結果によると、日本人成人(30〜49歳男性)のMg推定摂取量は240〜244mg/日だった。日本人の食事摂取基準(2010年版)の370mg/日よりも130mg/日も不足しており、WHO推奨量である420mg/日と比べても176mg/日も不足している。

 横田氏は現状を、「無意識のうちに慢性的なMg摂取不足に陥っている」と警告した。その上で、「日ごろから十分なMg摂取を心がけることが、2型糖尿病・メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の発症あるいは進展の予防に極めて重要」と指摘、「若いころからの正しい食育が強く望まれる」と求め講演を終えた。

(日経メディカル別冊編集)