東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の辻野大助氏

 経口血糖降下薬インスリン製剤を併用するBOTBasal supported Oral Therapy)によるインスリン導入の際、持効型インスリン製剤よりも二相性インスリン製剤を用いた方が血糖変動を改善できる可能性が示された。持続血糖モニター(Continuous Glucose Monitoring:CGM)を用いた検討で明らかになったもので、5月17日から19日まで横浜で開催された第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で、東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の辻野大助氏が報告した。

 これまでに、経口血糖降下薬では十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病患者に対し、二相性インスリン製剤であるインスリンアルパルト-30(以下、30MIX)を夕食直前1日1回投与から開始し、投与回数を段階的に増やしていくことで血糖値が改善することが内外で報告されている。また、その改善効果は持効型インスリン製剤の就寝前1日1回投与に比べてより高いことも示唆されているが、こうした経口血糖降下薬と二相性インスリン製剤あるいは持効型インスリン製剤の併用におけるCGMを用いた血糖変動のエビデンスは集積されていない。

 そこで辻野氏らは、経口血糖降下薬では血糖コントロールが改善しない2型糖尿病患者を対象に、経口血糖降下薬に加えて、持効型インスリン製剤のインスリン デテミル(以下、デテミル)または30MIXを朝食直前1日1回投与した場合における血糖変動を、CGMを用いて比較検討した。

 対象は、経口血糖降下薬内服のみの治療で、HbA1c(NGSP値)8%以上11%未満の2型糖尿病患者30人。ただし、2カ月以内に速効型インスリン分泌促進薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬を使用していないこと、6カ月以内にインスリン治療を受療していないことを条件とした。多剤併用は可とした。

 対象から同意を取得後、デテミル朝食直前1日1回投与15例と30MIX朝食直前1日1回投与15例の2群に無作為割り付けし、インスリン投与を開始した。両群ともに服用中の血糖降下薬はそのまま継続した。

 2カ月以上外来にてインスリン投与量の調節を行いながら、空腹時血糖値130mg/dLを目標に治療を進め、2カ月経過後に2泊3日の入院でCGMを実施し、入院2日目の24時間CGMデータを解析した。

 主要評価項目は、CGM測定に基づく24時間平均血糖値、24時間血糖値の標準偏差(SD)、平均血糖変動幅(mean amplitude of glycemic excursions:MAGE)、低血糖(70mg/dL未満)および高血糖(180mg/dL超)の時間、各食後の血糖のピーク値および上昇幅、各食前から各食後の血糖ピーク値までの時間。それらに加え、インスリン投与開始時から入院時までのHbA1cの低下度と、インスリン量調整期間中の低血糖の頻度も比較した。

 両群の性別、年齢、BMI、尿中C-ペプチド(CPR)、インスリン開始時のHbA1c(NGSP値)、入院時のインスリン投与量に有意差はなかった。なお、インスリン開始時のHbA1c(NGSP値)の平均値は、デテミル群8.58%、30MIX群8.88%だった。

 入院時までのHbA1cの低下度は、デテミル群1.11±0.73%、30MIX群1.01±0.55%で、両群に差はなかった。入院までの体重増加は、30MIX群2.2±3.4kgに対し、デテミル群では0.5±2.6kgと少なかったが有意差はなかった。インスリン量調整期間の低血糖発現件数は、デテミル群の4例に対し、30MIX群では1例と少なかったが、有意差はなかった。

 24時間のCGMデータに基づく平均血糖値は、30MIX群の165±27mg/dLに比べ、デテミル群は155±15mg/dLと低かったが、有意差はなかった。血糖変動の指標であるSDではデテミル群の41.6±9.0mg/dLに対し、30MIX群では33.9±13.8mg/dLと少ない傾向を認めたが有意差はなかった(P=0.088)。

 しかしMAGEは、デテミル群の101.8±13.8mg/dLに対し、30MIX群では79.9±31.9mg/dLと低値で、統計学的有意差を認めた(P=0.021)。低血糖の時間も、30MIX群は0.3±1.3分で、デテミル群の15.4±26.6分に比べて少ない傾向を認めた(P=0.055)。高血糖の時間は、デテミル群395±169分、30MIX群433±300分であり有意差は認めなかった。

 2カ月後の24時間血糖変動を解析した結果、デテミル群に比べて30MIX群は夜間の血糖値が安定しており、朝食後の血糖値上昇が少なかった。

 各食後の血糖のピーク値には両群間に差はなかったが、朝食後の血糖上昇幅は、デテミル群の106±32mg/dLに対し、30MIX群では65±31mg/dLと有意に少なかった(P=0.002)。昼食後および夕食後の血糖上昇幅は両群間に差はなかった。各食前から食後の血糖ピ−ク値までの時間は、朝食の前後において、デテミル群の109±35分に対し、30MIX群では86±24分と有意に短かった(P=0.044)。昼食前後および夕食前後では両群間に差はなかった。

 これらの結果から辻野氏は「2型糖尿病に対するBOTでインスリン導入を考える場合、持効型インスリン製剤より二相性インスリン製剤を朝1回投与した方が血糖変動を改善できる可能性が示された。今後は、平均血糖値が高値でもMAGEが小さいことと、平均血糖値が低値でもMAGEが大きいことのどちらが死亡や心血管イベントのより大きなリスクとなるのか、長期的な検討が必要」と締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)