開発中の超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)が持続化を発揮する機序として、皮下ではインスリンのヘキサマー(6量体)が鎖のように多数つながったマルチヘキサマー構造となっており、亜鉛(Zn)イオンが徐々に拡散することでマルチヘキサマーの末端から徐々に分解されていることが電子顕微鏡(TEM)を用いた解析から明らかになった。デンマークNovo Nordisk社Peter Kurtzhals氏らの検討結果で、5月17日から19日まで横浜で開催された第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で、Kurtzhals氏の代理としてノボノルディスクファーマの木村佳正氏が報告した。

 一般的に、インスリンアナログ製剤は、製剤中ではインスリンが6つ結合したヘキサマー(6量体)を形成している。そして、皮下投与後、ヘキサマーがモノマーに分離しインスリンとして作用する。

 今回、TEMを用いた検討で、皮下組織を模した生理学的な条件下でデグルデクは平均幅6.3±0.9nmの細長い鎖のような構造を形成していることが確認された。こうした構造はフェノール存在下では認められなかったことから、デグルデクはフェノールを含んだ製剤中ではマルチヘキサマーを形成せず、皮下注射後にフェノールが拡散するとマルチヘキサマーを形成することが確認された。

 マルチヘキサマーの形成が可逆的で、マルチヘキサマーからモノマーが放出されるかどうかを検討するために、生理学的条件下のデグルデクにEDTAを添加してZnイオンを強制的にキレートしたところ、マルチヘキサマーは解離してモノマーが形成された。このことから、マルチヘキサマーの形成は可逆的であり、Znイオン依存性であると考えられた。そして、デグルデクは、皮下組織内ではマルチヘキサマーからZnイオンが拡散によって少しずつ解離することでモノマーがゆっくりと放出すると考えられた。

 また、1型糖尿病患者66人を対象にデグルデク(0.4、0.6、0.8U/圈砲8日間投与し、8日目のデグルデク投与後にグルコースクランプ法を用いて、デグルデクの血糖低下効果の持続時間を検討した。目標血糖値は100mg/dLとし、血糖値が150mg/dLを超えた場合に血糖低下効果が消失した判定した。

 その結果、全ての用量でデグルデクの血糖低下効果は42時間を超えて持続することが示された。0.4U/kg群では、42時間後までに3例で血糖値は150mg/dLを超え、42時間以降には目標血糖値である100mg/dLから乖離した。しかし、0.6U/kg群、0.8U/kg群では血糖値はほぼ水平に維持された。

 今回の検討から、デグルデクは注射後に皮下組織中で可溶性かつ安定したマルチヘキサマーを形成し、マルチヘキサマーから緩徐にモノマーに解離することで、皮下組織から血中にデグルデクが安定して供給されることが示された。演者らは、こうした機序のため、デグルデクの血糖低下効果は42時間を超えて持続すると結論した。

(日経メディカル別冊編集)