朝日生命成人病研究所の大西由希子氏

 開発中の新規超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデクのアジア地域での国際共同試験の日本人サブ解析の結果、インスリン デグルデクの2型糖尿病患者に対するHbA1c改善効果はインスリン グラルギンと同等であることが明らかとなった。5月17日から19日まで横浜で開催された第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で、朝日生命成人病研究所大西由希子氏が発表した。

 インスリン デグルデク(以下、デグルデク)は、皮下でマルチヘキサマー(インスリンの6量体が長くつながった状態)を形成し、そこから緩徐に血中に吸収され、長時間にわたり安定した作用を示す新規の超持効型インスリン製剤。

 2型糖尿病患者を対象に、デグルデクのインスリン グラルギン(以下、グラルギン)に対する非劣性を検証するアジア地域での国際共同試験が行われた。試験に登録されたのは、日本、韓国、台湾、香港、タイ、マレーシアの6カ国から計435例。今回、このうちの日本人2型糖尿病患者133例についてサブ解析を実施した。

 試験の登録基準は、罹病期間6カ月以上、年齢18歳(日本は20歳)以上、BMI 35kg/m2以下の2型糖尿病患者。また、前治療として経口血糖降下薬を3カ月以上服用していても、HbA1cが7.0〜10.%(NGSP値)で推移し、血糖コントロールが不十分であることだった。

 主要評価項目は、HbA1cのベースラインから投与後26週までの変化量とし、デグルデクの変化量がグラルギンに対して非劣性であるかどうかを評価した。副次評価項目は、空腹時血糖の変化量、低血糖および有害事象の発現件数など。

 インスリンの投与法は、デグルデクおよびグラルギンのいずれも10単位(U)での開始とした。ただし、医師の裁量により変更は可能だった。デグルデクは1日1回夕食開始時から就寝までの間の投与、グラルギンも1日1回同時刻の投与とした。必要に応じて経口血糖降下薬の併用は可能で、メトホルミン、SU薬、α-グルコシダーゼ阻害薬が用いられた。

 投与量調節は、朝食前の自己血糖測定3日間の平均血糖値(mg/dL)で70〜89を基準とし、それより低ければ減量し、高ければ増量することとした。

 日本人患者133例の内訳は、デグルデク群89例、グラルギン群44例。デグルデク群では女性の割合がやや多く、体重がやや低い傾向を認めたが、年齢、罹病期間、HbA1cなど、両群の患者背景に2群間で有意差はなかった。両群とも罹病期間は約12年、体重は63〜67kg、BMIは23.5〜25.4kg/m2、HbA1cは8.5%前後、空腹時血糖値は163.8〜169.2mg/dLだった。

 主要評価項目であるHbA1cの変化量については、両群ともに16週時にはNGSP値で約1.5%の低下を認め、デグルデクのグラルギンに対する非劣性が証明された。空腹時血糖値も両群ともに12週時以降60 mg/dL以上の低下を認め、両群間に有意差は認めなかった。

 低血糖の定義は、原則として血糖自己測定により56mg/dL未満であれば確定低血糖とし、また午前0時1分から同日午前5時59分までに発現した確定低血糖を夜間低血糖とした。

 デグルデク群、グラルギン群ともに、第3者による処置を必要とする重大な低血糖の報告はなかった。確定低血糖の発現率はグラルギン群の4.47人・年(27例、61.4%)に対し、デグルデク群では3.55人・年(47例、53.4%)と低い傾向が示された。夜間低血糖もグラルギン群の1.28人・年(10例、22.7%)に対し、デグルデク群では0.59人・年(15例、17.0%)と低い傾向が示された。

 確定低血糖の累積発現件数は、26週の時点ではデグルデク群の確定低血糖発現リスクはグラルギン群に比べて、13%低かった。ただし有意な差ではなかった。なお、グローバル試験全体での検討ではデグルデク群の確定低血糖発現リスクはグラルギン群に比べて有意に低いことが確認されている。

 確定夜間低血糖の累積発現件数も、26週の時点では有意差はなかったものの、デグルデク群の確定低血糖発現リスクはグラルギン群に比べ、50%低かった。大西氏は、デグルデクを適切な投与量へ調節された後は低血糖の発生件数はグラルギン群に比べ減っていったとした。

 その他の有害事象はデグルデク群3.34人・年(67例、71.6%)、グラルギン群2.74人・年(29例、65.9%)だった。

 最後に大西氏は、「超持効型インスリンであるデグルデクは日本人2型糖尿病患者において、グラルギンと同等に血糖を改善することが確認された。また低血糖のリスクがより低かった。デグルデクは安全性と忍容性に優れると考えられる」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)