医療法人相生会墨田病院の生島一平氏

 超持効型インスリン製剤として国内外で開発が進められているインスリン デグルデクは、日本人1型糖尿病患者においてもコーカシアン被験者と同様に長時間作用する薬物動態と薬力学的特性が確認された。5月19日まで横浜で開催されていた第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で、医療法人相生会墨田病院生島一平氏が発表した。

 デグルデクはヒトインスリンB鎖30番目のスレオニンを欠落し、29位のリジンにグルタミン酸をスペーサーとしてHexadecandioylを付加しており、その他のアミノ酸配列はヒトインスリンと同一となっている。一般的に、インスリン製剤は、製剤中ではインスリンが6つ結合したヘキサマー(6量体)を形成している。そして、皮下投与後、ヘキサマーがモノマーに分離しインスリンとして作用する。デグルデクは製剤中では6量体同士が2つ結合したダイヘキサマーの形で存在しており、皮下投与後添加剤であるフェノールが拡散することでヘキサマー同士が多数結合して長い鎖のようなマルチヘキサマーを形成する。その後、体内でマルチヘキサマーの末端から亜鉛(Zn)が徐々に外れることで端から1つずつモノマーとなって血中へ移行することで、24時間以上の作用持続を実現する。

 今回演者らは、1型糖尿病患者を対象にデグルデクの薬物動態および薬力学的特性を検討した。組み入れ基準は年齢20〜65歳、HbA1c 10.0%未満、罹病期間12ヵ月以上の1型糖尿病患者で、22例(年齢41.5歳、HbA1c 7.5%)が被験者となった。

 被験者にはデグルデク 0.4U/kgを1日1回、合計6回投与した後、薬物動態を評価した。また、注入したインスリンの作用で血糖値が低下する際に、血糖値を正常に保つために必要なグルコースを注入し続け、インスリンの効果を測定するグルコースクランプ試験を実施した。6日目の定常状態下で最長26時間のグルコースクランプ試験を実施し、血糖値および平均グルコース注入率(GIR)を評価した。グルコースクランプ試験における血糖目標値は100mg/dLとし、血糖値が150mg/dLを超えた時点で血糖降下作用は消失と判定した。また、コーカシアン1型糖尿病被験者66例(36.9歳、HbA1c 8.1%)を対象にデグルデク 0.4、0.6、0.8U/kgのいずれかを合計8回投与した後、最長42時間のグルコースクランプ試験を実施した海外でのデータと比較した。

 日本人の患者背景は、年齢41.5歳、糖尿病罹病期間17.6年、体重60.4kg、BMI 22.3kg/m2、HbA1c(NGSP値)は7.5%だった。比較検討したコーカシアン被験者の背景は、年齢36.9歳、罹病期間は17.6年、体重80.2kg、BMI 24.9kg/m2、HbA1cは8.1%だった。

 デグルデク 0.4 U/kgの定常状態における平均血清中濃度は日本人とコーカシアンの間で同様だった。日本人被験者でのデグルデク 0.4U/kg投与後の定常状態におけるデグルデク血清中濃度は、30時間後は2136pmoL/L、36時間後は1674pmoL/L、48時間後は1054 pmoL/Lで、投与後24時間以上48時間まで、コーカシアン被験者(0.4U/kg投与時)とほぼ同じ濃度だった。またデグルデクは120時間にわたって血清中から検出された。

 一方、グルコースクランプ試験では、血糖値が日本人被験者では26時間後まで、コーカシアン被験者(0.6U/kg投与時)では42時間後まで一定の値にコントロールされることが示された。24時間後までのGIRプロファイルはコーカシアン被験者に比べて日本人被験者でやや低かったが、ほぼ一致していた。

 以上の検討から生島氏は、「日本人1型糖尿病被験者におけるデグルデクの薬物動態および薬力学的特性はコーカシアン被験者と同様であった」と述べ、「デグルデクの作用時間は少なくとも42時間を超えると考えられる」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)