京都医療センターWHO糖尿病協力センターの小鳥真司氏

 糖尿病足病変ハイリスク患者への予防的フットケアの有効性についての検討で、介入6カ月後の足潰瘍発症率はフットケア強化群で有意に高いという結果が示された。これは、強化群で足病変歴をもつ患者の割合や喫煙率が高く、よりハイリスクな患者が多かったためと考えられた。糖尿病足病変ハイリスク患者への外来での予防的フットケアの有効性に関する多施設共同研究の中間報告で、京都医療センターWHO糖尿病協力センターの小鳥真司氏らが、5月17日から19日まで横浜で開催された第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で発表した。

 近年、糖尿病足潰瘍・壊疽による足切断が増加傾向にある。欧米では、フットケア医療専門職がおり、予防的フットケアの有効性が報告されているが、日本における予防的外来フットケアの有効性が明らかにされていない。そこで小鳥氏らは、標準化外来フットケア技術による足病変の発症や足切断への効果を明らかにし、実施可能で有効なフットケア方法を検討している。今回は介入6カ月後の成績を報告した。

 試験の対象は、国立病院機構所属施設13施設と国立循環器病研究センターの計14施設の糖尿病足病変ハイリスク患者114人。糖尿病足病変ハイリスク患者の定義は、(1)足潰瘍や足切断の既往を有するが現在は治癒している、(2)下肢虚血(足関節/上腕血圧比<0.7)、(3)重症神経障害(5.07モノフィラメントに知覚不能)――の3項目のうち、最低1項目を有する患者とした。

 研究1年目はフットケア介入前観察期とし、2008年から2009年に足潰瘍・壊疽で入院した患者を対象に、足潰瘍再発率、足切断率、入院期間、入院医療費、入院中死亡率、施設でのフットケア実施状況などについて検討した。また、フットケア技術を標準化するため、すべての参加施設においてフットケアを担当する医療従事者を対象に、研修会を2回実施し(1回につき16時間)、フットケア患者教育用資材(セルフ・フットケアノート)を作成、配布した。

 その後、研究2年目(フットケア介入後観察期)で、強化介入群(7施設)と従来のフットケアを継続するコントロール群(7施設)の2群に分け、フットケア介入を開始した。強化群では、外来受診時に、医療従事者による足のチェックと指導を毎回行い、必要に応じて爪切りや足洗浄などを行った。また。患者に専用の記録ノートを渡し、自宅でセルフケアを記録するよう指導した。

 試験では、登録から試験終了時まで、6〜12カ月ごとに評価項目を検討することになっている。主要評価項目は、足潰瘍発症率、足切断率で、副次的評価項目は入院加療率、入院期間、入院医療費、フットケア知識度、セルフケア実施度、SF-8による健康関連QOLとした。

 登録患者の平均年齢は62.4歳、男性割合は71.1%、推定罹病期間は19.4年。登録時のフットケア知識度は強化群で有意に高かったが、フットケア実施度は両群間に有意差は見られなかった。登録時のQOLは、身体的サマリースコア、精神的サマリースコアともに両群間に有意差は認められなかった。

 ただし、患者背景において、強化群がコントロール群に比べて足病歴が多い傾向にあり、喫煙習慣は有意に多かった。また、強化群ではコントロール群より顕性蛋白尿が有意に多く、透析が有意に少ないという違いがあった。なお、追跡期間中に3例が死亡、6例が脱落した。また、1例は今回の集計時に登録後6カ月未満だった。介入6カ月後の解析は104例について行われた。

 その結果、介入6カ月後の足潰瘍発症率は、強化群(79例)が24.1%、コントロール群(25例)が8.0%で、有意差が見られた。入院での足切断率は 強化群が12.5%(1例)、コントロール群が0%で、強化介入群では有意に高値だった。ただし、強化群の1例は、足趾切断であり大切断ではなかった。また、入院率、足潰瘍発症例での入院率、足切断率については、両群で有意差はなかった。

 介入開始6カ月後のフットケア回数をみると、強化介入群は6カ月間に5.2±3.3回で、コントロール群の2.9±5.5.回と比べて有意に多かった。1回当たりのケア時間は、強化介入群が24.6±12.3分で、コントロール群の4.2±6.4分よりも有意に長かった。また、爪切りや足洗浄または足浴実施回数など、すべてのフットケア項目において、強化群では有意に実施回数が多かった。

 小鳥氏は、介入6カ月後の時点で、強化介入群の足潰瘍発症率や入院での足切断率が高かった理由について、「強化介入群は、足病変歴をもつ患者の割合や喫煙率がコントロール群よりも高く、よりハイリスクだったと言える。また、コントロール群の症例数が少なかったことや、コントロール群の中でフットケア実施率が平均よりも高い施設があったことも考えられる」と語った。

(日経メディカル別冊編集)