せいの内科クリニック(福島県郡山市)の清野弘明氏

 1型糖尿病患者を対象に新規超持効型インスリン デグルデクのインスリン デテミルに対する非劣性を検討した国際共同試験のサブ解析から、インスリン デグルデクの日本人1型糖尿病患者のHbA1c改善効果はインスリン デテミルと同等で、空腹時血糖値改善効果は優れる可能性が示された。また、低血糖発現件数は同等で、夜間の低血糖発現件数は有意に少ないことが明らかとなった。5月19日まで横浜で開催されていた第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で、せいの内科クリニック(福島県郡山市)の清野弘明氏らが報告した。

 インスリン デグルデク(以下、デグルデク)は、皮下でマルチヘキサマー(インスリンの6量体が長くつながった状態)を形成し、そこから緩徐に血中に吸収され、長時間にわたり安定した作用を示す新規の超持効型インスリン製剤。同じ持効型インスリン製剤であるインスリン デテミル(以下、デテミル)に対するデグルデクの非劣性を検証する国際共同試験が世界7カ国から登録された1型糖尿病患者456人を対象に実施された。清野氏らは、この試験の登録患者のうち、日本人の登録者186人を抽出し、日本人におけるデグルデクの有効性と安全性を検討した。

 試験の登録基準は、1型糖尿病罹病期間12カ月以上、前治療におけるベーサルボーラス療法の12カ月以上の施行、年齢は海外では18歳以上とされたが日本人は20歳以上、HbA1cはNGSP値で10%以下、BMIは35kg/m2以下だった。対象者をデグルデク+インスリン アスパルト群とデテミル1日1回または1日2回+インスリン アスパルト群に割り付けたオープンラベル試験で、主要評価項目は、HbA1cのベースラインから投与後26週までの変化量とした。副次評価項目として、血糖値の各種パラメータのほか、インスリン投与量、患者報告によるアウトカム、低血糖、有害事象などが評価された。

 インスリンの投与方法は、前治療における基礎インスリンが1日2回の場合は、総投与量を計算し、それをもとに医師の判断で投与量を調節したデグルデクおよびデテミルの1日1回夕方投与とした。前治療が1日1回の場合は、同用量のデグルデクおよびデテミルの1日1回夕方投与とした。デテミル1日1回で開始した患者は、8週以降の血糖コントロール状況により、1日2回に変更可能とした。また全例に食事時のインスリンとして、インスリン アスパルトを3回の食事時に投与した。投与量調節は、デグルデクおよびデテミルについては朝食前血糖値が70〜89mg/dLを基準とし、これより高かったり低かったりすれば用量を変更。食事時のインスリン アスパルトについては、食前血糖値89mg/dL以下を基準値とし、それより高ければ増量した。

 日本人186例の内訳は、デグルデク群124例、デテミル群62例だった。デグルデク群で女性がやや多く、年齢がやや高い傾向を認めたが、両群の臨床的背景に有意差はなかった。両群とも、糖尿病罹病期間は約13年、体重は約60kg、BMIは23kg/m2弱、HbA1cは7.9%デグルデク群、デテミル群8.2%で差はなく、空腹時血糖値も両群ともに170mg/dL強で差はなかった。対象のうち、有害事象やコンプライアンス不良などの理由で、デグルデク群で3例、デテミル群で6例が脱落し、それぞれ121例と56例が解析対象となった。

 主要評価項目であるHbA1cの変化量については、両群とも試験開始後から低下し、デグルデク群では26週時にNGSP目標値である6.9%近くまで低下し、デテミル群より低下する傾向にあったが両群間に有意な差はなかった。一方、副次評価項目である空腹時血糖値ではデテミル群が150mg/dL前後で推移したのに対し、デグルデク群では110〜120mg/dLに低下し、両群間には39.36mg/dLの有意な差を認めた(p<0.05)。

 副次評価項目である1日のインスリン投与量(U/kg)は、デグルデク群では1週目0.25、26週目0.26とほぼ同等だったが、デテミル群では0.26から0.33に増加していた。ボーラスインスリン投与量を含めた総投与量も、デグルデク群では0.69から0.72とほぼ同等だったのに対し、デテミル群では0.72から0.89に増加していた。

 低血糖については、患者自身が対処できなかった低血糖を重大な低血糖、患者自身で対処できたが血糖値が56mg/dL未満となっていた場合は重大でない低血糖とし、この2つを確定低血糖と判定した。一方、血糖値が56mg/dLを超えていれば本検討では低血糖としなかった。さらに、0時から午前5時59分の間に発現した低血糖は夜間低血糖と定義した。

 試験期間中の確定低血糖の累積件数を検討した結果、デグルデク群がデテミル群に比べ発生リスクが6%低下していたが、両群間に有意差はなかった。一方、確定夜間低血糖では、デグルデク群がデテミル群に比較して発生リスクが52%有意に低下していた(P<0.05)。有害事象の発現率は両群同程度だった。

 以上の結果をもとに清野氏は、「日本人の1型糖尿病患者において、デグルデクは血糖コントロールを改善し、空腹時血糖値もデテミルに比べて有意に低下させた。確定低血糖の発現件数は同様であったが、QOLへの影響が大きい夜間低血糖の発現件数はデグルデク群で有意に少なかったため、デグルデクの有用性は高く評価できる」と総括した。

(日経メディカル別冊編集)