九州大学大学院環境医学分野の秦明子氏

 マグネシウム摂取量糖尿病発症に関する疫学研究は、欧米人を対象とした海外での報告が多く、日本人を対象とした研究は少ない。そこで、福岡県久山町の健診データを用いて追跡研究を行ったところ、2型糖尿病発症率は、マグネシウム摂取量の上昇に伴い低下し、特にインスリン抵抗性、慢性炎症、飲酒習慣を有する患者でその効果が高いことが示された。5月19日まで横浜で開催されていた第55回日本糖尿病学会年(JDS2012)で、九州大学大学院環境医学分野秦明子氏らが発表した。

 対象は、1988年に久山町の健診を受診した糖尿病のない40〜79歳の住民のうち、その後糖尿病発症の有無を確認できた1999人。追跡期間は21年間で、その間に2型糖尿病を発症したのは417人だった。

 食事調査から得られたベースラインの1日当たりのマグネシウム摂取量によって4分位(Q1≦148.5mg/日、Q2:148.6〜171.5mg/日、Q3:171.6〜195.5mg/日、Q4≧195.6mg/日)に層別化した。

 分位別に見ると、マグネシウム摂取量が増加するにつれ、2型糖尿病の発症率は低下した(P for trend<0.01)。Q1の2型糖尿病発症の相対危険度を1とした場合、分位が高くなるにつれて相対危険度は減少した(Q2:0.84、Q3:0.67、Q4:0.63、P for trend<0.01)。

 さらに糖尿病の危険因子別に、マグネシウム1SD上昇ごとの2型糖尿病発症の相対危険度を検討したところ、インスリン抵抗性、HOMA-IR、飲酒習慣の3因子において、マグネシウム摂取量との有意な交互作用を認めた。つまり、インスリン抵抗性(HOMA-IR)のある群はない群より、慢性炎症の指標である高感度CPPが高い群は低い群より、飲酒習慣がある群はない群よりも、それぞれ、マグネシウム1SD上昇ごとの相対危険度が有意に低かった。

 秦氏は、「日本人のデータにおいても、マグネシウムの摂取は2型糖尿病発症の独立した防御因子であることが示された。また、インスリン抵抗性、慢性炎症、飲酒習慣の3つの危険因子を有する人で防御効果が見られた。よって、これらのリスクを有する人には特にマグネシウム摂取が推奨される」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)