奈良県立医科大学第1内科の岡田定規氏

 低用量アスピリン療法は、心血管イベントの2次予防に対して有効との報告があるが、糖尿病患者の1次予防効果については十分なエビデンスが得られていない。そこで、2型糖尿病患者に対する低用量アスピリンの心血管イベント1次予防効果を調べるために無作為比較対照試験(JPAD研究)を実施した結果、糖尿病罹患期間が長くなるにつれ低用量アスピリンの予防効果は減弱し、罹病期間が4分位中最も短い分位でのみ有効だった。5月19日まで横浜で開催されていた第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で、奈良県立医科大学第1内科の岡田定規氏らが発表した。

 対象は、心血管イベントの既往のない2型糖尿病患者2539人。低用量アスピリン投与群(81mg、100/日)と非投与群に分け、4.4年(中央値)追跡した。主要評価項目は、心血管イベントの発症(複合エンドポイント)とした。

 その結果、2群間でイベント発症率に有意な差は見られなかった(ハザード比〔HR〕:0.80、95%信頼区間:0.58-1.1、P=0.16)。

 そこで、罹病期間によって4分位(Q1≧12.3年、Q2:7.0〜12.3年、Q3:2.9〜7.0年、Q4<2.9年)に層別化し、それぞれの分位について心血管イベント発症率を比較した。

 その結果、罹病期間が長いQ1〜Q3では低用量アスピリン投与群と非投与群間で有意差が見られなかったが、罹病期間が一番短いQ4では、低用量アスピリン投与群は非投与群よりも有意に心血管イベント発症率が低下した(HR:0.34、95%信頼区間:0.12-0.81、P=0.016)。

 さらに患者を治療法別(インスリン、経口血糖降下薬、食事療法のみ)に層別化して同様の検討を行ったところ、「食事療法のみ」の群ではアスピリン投与が有効であったが(HR:0.21、95%信頼区間:0.05-0.64、P=0.0069)、インスリン群、経口血糖降下薬群では効果が認められなかった。

 同様に細小血管合併症を認めない群では、低用量アスピリンが有効だったが(P=0.04)、糖尿病性細小血管合併症を有する群では効果が認められなかった。

 これらの結果から岡田氏は、「低用量アスピリンの心血管イベント予防効果は、糖尿病の進行とともに減弱する可能性が示唆された。よって、2型糖尿病患者に対する心血管イベント予防を目的とした低用量アスピリン療法は、初期の患者に対して行うべきなのかも知れない」と語った。

(日経メディカル別冊編集)