大和調剤センター ウラン薬局の浅田美子氏

 目前に迫った節電の夏に向け、注射製剤の保管・携帯について、患者への指導内容を見直すきっかけを与えてくれる報告があった。大和調剤センター ウラン薬局浅田美子氏らは、猛暑と東日本大震災後の節電が重なった2011年の夏に、薬局を訪れる患者から注射製剤の保管・携帯について質問を受ける機会があった。これを機に、インスリンGLP-1製剤などの注射製剤の夏季の保管をどうしているのか、災害時の対策は整っているのか、お薬手帳は常時携帯できているのか――などを明らかにするため来局する患者を対象にアンケート調査を実施した。成果は、5月19日まで横浜で開催されていた第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で報告された。

 対象は、注射製剤(インスリンやGLP-1製剤)を使用している患者427人。口頭で調査への同意を得て、自記式アンケートを実施した。期間は2011年7月29日から8月26日までの4週間。アンケートでは主として、(1)未使用品・使用途中・外出先での保管場所、(2)針の交換・注射製剤取り扱い上のトラブル、(3)災害用バッグの用意と注射薬の用意)、(4)お薬手帳の常時携帯――などを質問した。

 その結果、427人中421人から回答があり、回答率は98.6%だった。回答者の年齢は58.9±15.0歳、注射歴は7.1±7.1年、HbA1c(NGSP値)は7.5±1.9%だった。性別は女性55%、男性45%だった。使用している注射製剤の内訳は、1回注射(BOT、GLP-1製剤)が17%、インスリンポンプ療法(CSII)が2%、2回以上注射(Basal-bolus、超速攻型、混合2回または3回)が81%となっていた。

 まず未使用品の保管場所については、従前の指導どおり「冷蔵庫」と答えた人が338人で81.1%と圧倒的に多かった。ただし、「室内」が68人(16.1%)もあり、中には「冷蔵庫なんて初耳」と話す注射歴6年の患者もいたという。

 使用途中製剤の自宅での保管場所については、こちらも指導に沿った「室内」が323人(77.8%)で最も多く、「冷蔵庫」が44人(10.6%)で続いた。ただ、「室内」と回答した人の中には、「猛暑にもかかわらずエアコンもつけずに頑張った」とする人も含まれていた。演者らはこの点について、日常生活での室内温度が医薬品の保存室温より高くなりうることに留意すべきとした。

 次に、使用途中製剤の自宅での保管場所については、「室内」と回答した群と「冷蔵庫」と回答した群で患者背景をみたところ、「冷蔵庫」と回答した群で注射歴が長い傾向にあった(8.1年 対 6.7年)。また、室内群と冷蔵庫群で注射製剤の1回注射と2回以上注射の割合を比較したところ、冷蔵庫群で1回注射の製剤を使っていた人が有意に多いということも分かった(P<0.01)。

 外出先での保管場所については、バッグが294人(72.1%)で最も多かった。ただし、「持参しない」との回答が20.3%もあり、さらに「車内」との回答が1.2%と、保管方法に課題を抱える人が少なくなかった。持参しないという人の場合、特に2回以上注射では注射が正しくできていない事例も含まれると考えられることから、浅田氏は、服薬指導の徹底が必要と指摘した。

 また、外出先では保管が面倒との理由から、「あえて外出を避けている」と話す患者もいたという。外出を控えることは患者の活動性の抑制につながる可能性があり、療養への悪影響が懸念される。

 調査ではこのほかに、(1)2回以上注射の場合に針をつけたままにする人が多かった、(2)399人中33人で注射剤内に大きな気泡ができたことがある人がいた、(3)災害用バッグは女性で用意している人が多かった、(4)注射剤を災害バッグに入れていた人は8.2%に過ぎなかった、(5)お薬手帳を常時携帯している人は26.7%と不十分だった、なども明らかになった。

 これらの結果を踏まえ演者らは、「未使用の注射製剤は冷蔵庫で保管」と「使い始めた注射製剤は基本は室温で保管」を求めるパンフレットを作成し、注射剤の正しい保管方法についての指導を強化したという。留意点としては、(1)冷蔵庫での保管の場合は凍結に注意すること、(2)室温保管の場合は1〜30度の室温を想定しており、30度以上になるような場所には置かないこと、などを挙げ注意を促す内容としている。

 今年も節電の夏が目前に迫っているが、注射製剤の保管・携帯については、改めて「室内温度の確認や携帯時の断熱のアドバイスを行う」(浅田氏)などの対応が必要と言えそうだ。

(日経メディカル別冊編集)