茅ヶ崎徳州会総合病院内科の河崎さつき氏

 糖尿病の細小血管障害大血管障害は、糖尿病を起点として並行して進行すると考えられている。今回、心血管病網膜症腎症の発症・進展について検討したところ、これらは相関しており、年齢罹患期間HbA1cが3者に共通したリスク因子であることが分かった。茅ヶ崎徳州会総合病院内科の河崎さつき氏らが、5月19日まで横浜で開催されていた第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で発表した。

 糖尿病の細小血管障害の発症・進展は、血糖や血圧のコントロール不良の蓄積によることが示されている。大血管障害は、血糖のみならず、脂質、血圧、生活習慣など、多くの因子により引き起こされると考えられている。また、細小血管障害である網膜症は大血管障害の代表である心血管病の危険因子とする報告もある。そこで河崎氏らは、2型糖尿病患者において、心血管病、網膜症、腎症の病態とその臨床背景を調査し、これらの危険因子や関連について検討した。

 対象は、同科に外来通院する2型糖尿病患者1003人(うち男性578人、年齢63.7歳、罹患期間136カ月、HbA1c[NGSP]8.2%)。心血管病については、安静時に心電図上で虚血の所見を認めた例、狭心症や心筋梗塞の既往がある例を「心血管病あり」とし、それ以外は「心血管病なし」と2グループに分けた。網膜症に関しては、「網膜症なし」、「単純網膜症」、「増殖前網膜症」、「増殖性網膜症」の4グループに分類した。腎症については、厚生省分類に基づき、「1期(腎症前期)」、「2期(早期腎症期)」、「3A期以上(顕性腎症前期から透析療法期)」の3グループに分類した。

 その結果、心血管病ありと診断された患者は38.6%だった。心血管病あり群となし群で患者背景を比較したところ、年齢、罹患期間、収縮期血圧、BMI、HbA1cなどで有意差が見られた。そこで、ステップワイズ法でロジスティック回帰分析を行った結果、心血管病有無に対する独立したリスク因子として認められたのが、年齢(65歳以上)、中性脂肪(150mg/dL以上)、喫煙だった。

 網膜症については、網膜症なしが69.7%、単純網膜症が13.2%、増殖前網膜症が5.8%、増殖性網膜症が11.3%だった。同様に、背景に有意差があったのは、年齢、罹患期間、拡張期血圧、BMI、HbA1cなどだった。網膜症の有無に対する独立したリスク因子を求めたところ、年齢(65歳以上)、診断時の年齢(50歳未満)、HbA1c(7.2%以上)、女性の4つが抽出された。

 腎症の病期については、1期が55.0%、2期が29.6%、3A期以上が15.3%。同じく患者背景に有意差が見られたのが年齢、罹患期間、収縮期血圧、ウエスト径、HbA1cなどであり、蛋白尿有無の独立したリスク因子として、罹患期間(10年以上)、収縮期血圧(140mmHg以上)、HbA1c(7.0%以上)が認められた。

 心血管病と網膜症の関連を見ると、網膜症の重症度が上昇するのに伴い、心血管病が多く見られるようになった。ただし、網膜症がないグループでも約30%の患者が心血管イベントを有していた。その一方、増殖性網膜症のグループでも約40%の患者が心血管イベントを有していなかった。

 心血管病と腎症の関連を見ると、腎症も重症度が上がるのに伴い、心血管病が多く認められた。ただし、腎症1期でも約30%の患者が心血管病を有している半面、3A期以上の患者でも約40%の患者は心血管病を有していなかった。

 以上の結果を踏まえ河崎氏は、「心血管病、網膜症、腎症の3者は、年齢、罹患期間、HbA1cといった血糖コントロール不良の蓄積を示す共通因子を有していた。また、心血管病と網膜症、腎症の間に相関が認められた」と結論した。その上で、網膜症なしや腎症1期の集団でも約30%が心血管病を有している可能性がある一方、増殖性網膜症や腎症3A期以上でも約40%が心血管病を持たない可能性があったことに関しては、「心血管病、細小血管障害の発症・進展にはそれぞれに特有なリスク因子も強く関与していることが示唆された」との見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)