東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の井内裕之氏

 高血圧合併2型糖尿病患者では、平均収縮期血圧値脈圧が高いと、収縮期血圧の短期変動が大きい傾向が確認された。また、動脈の硬さの指標「CAVI」(Cardio Ankle Vascular Index) と脈圧との間には正の相関関係が確認された。J-VACS(Jikei Variability of ABPM and CGM Study)の結果について、東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の井内裕之氏らが、5月17日から横浜で開催中の第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で発表した。

 これまでの研究から、糖尿病患者において、総死亡や心血管イベントのリスクを上昇させる主な原因は合併した高血圧であるとする報告や、外来時収縮時血圧の変動は血圧値とは独立して心血管イベントや死亡リスクに関連するとする報告、脈圧は心血管死亡リスクの予測に有用とする報告などが知られている。

 そこで井内氏らは、2型糖尿病患者を対象に24時間連続血圧測定(ABPM)を行い、各血圧値、血圧短期変動、脈圧の関係について検討した。また、血圧値とは独立した動脈硬化の予測因子として注目されるCAVIとの関連についても調べた。

 対象は、同科に入院中の2型糖尿病患者65人(高血圧合併患者55人、正常血圧10人)。入院で連続2日間、ABPMを測定した。平均年齢は54.2歳、平均HbA1c値(JDS値)は8.7%、平均糖尿病罹病期間は7.1年。運動強度は一定に保ったほか、食事療法では減塩(1日の塩分摂取量6g未満)とした。

 その結果、24時間平均収縮期血圧値と収縮期血圧短期変動の間には正の相関関係が確認された(相関係数0.326)。一方、24時間平均拡張期血圧値と拡張期血圧短期変動の間には相関関係はなかった。
 
 次に脈圧と収縮期血圧短期変動、拡張期血圧短期変動との関係について調べたところ、脈圧と収縮期血圧短期変動との間には正の相関が見られたが(相関係数0.331)、拡張期血圧短期変動との間には相関関係は確認されなかった。

 加えて、脈圧とCAVIとの関係について検討したところ、脈圧とCAVIとの間には正の相関関係が見られた(相関係数0.478)。重回帰分析の結果、脈圧は、年齢、BMI、糖尿病罹病期間とは独立したCAVIの予後予測因子であることが分かった。

 井内氏は今回の結果を踏まえ、「高血圧合併2型糖尿病患者では、平均収縮期血圧値や脈圧が高いと、血圧日内短期変動が大きい傾向があり、予後不良となる可能性が考えられる」と指摘した。また、脈圧とCAVIに正の相関関係が見られたことから、「脈圧は測定が簡便であり、糖尿病患者の動脈硬化の予測因子として有用な可能性が高い」と語った。

(日経メディカル別冊編集)