富山協立病院内科の田村有希氏

 SU薬不使用でシタグリプチン開始時HbA1c値が高い症例では、投与開始12カ月後のHbA1c値の改善幅は有意に大きかったことが示された。西東京地域を中心に行われた多施設共同の成果で、富山協立病院内科の田村有希氏らが、5月17日から横浜で開催中の第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で発表した。

 田村氏らは、シタグリプチンの治療効果を検証するため、西東京地域を中心とした10施設で観察研究を行った。対象は、2009年11月〜2010年6月にこれらの施設に通院したシタグリプチン投与中の2型糖尿病患者のうち、12カ月間追跡できた138人。治療目標はHbA1c値(NGSP値)6.9%未満とし、コントロールを行った。12カ月にわたって、HbA1c値(NGSP値)、体重、併用薬の状況を追跡した。

 患者の平均年齢は65.0歳、男性割合は49.5%、平均罹病期間は12.5カ月、BMIは25.1kg/m2、HbA1c値(NGSP値)が8.2%。併用薬の状況は、SU薬が60.0%、ビグアナイド薬が45.0%で、チアゾリジン薬は29.7%、α-グルコシダーゼ阻害薬は6.5%、グリニドは1.4%だった。

 HbA1c値の推移を見ると、シタグリプチン投与6カ月後は7.2%、12カ月後は7.5%で、開始時の8.1%と比べてそれぞれ有意に低下した(ともにP<0.0001)。一方、BMIは、6カ月後、12カ月後ともに有意差は認められなかった。

 そこで、シタグリプチン投与開始12カ月後のHbA1c値の改善に影響を与える因子を検討したところ、併用薬不使用、若年、開始時HbA1c高値が抽出された。さらに重回帰分析を行ったところ、SU薬不使用で開始時HbA1c値が高い患者の場合、HbA1c値の改善幅が大きいことが明らかになった。

 次に、治療開始6カ月から12カ月のHbA1c改善度に着目したところ、この間に全体の33.3%に当たる46人が0.5ポイント以上悪化したことも判明した。

 この悪化群(46人)についてさらに検討したところ、悪化群の方が非悪化群(92人)より、有意にSU薬の使用例が多く、併用薬も多く、開始時HbA1c値が有意に高いという結果となった。

 シタグリプチン単剤群(105人)と他剤併用群(33人)に分けて患者背景を見ると、他剤併用群はシタグリプチン単剤群と比べ罹病期間が有意に長く(13.447カ月 対 9.733カ月)、シタグリプチン投与開始12カ月後のHbA1c値の改善幅は有意に小さかった(0.567% 対 0.992%)。また、SU薬併用患者は不使用群と比べて罹病期間が有意に長く(14.0カ月 対 10.0カ月)、開始時HbA1c値は有意に高かった(8.2% 対 7.9%)。

 田村氏は、12カ月の追跡期間中に食事運動療法の不徹底やインスリン抵抗性によってHbA1c値が再悪化したと思われる症例があったとし、「食事療法や運動療法を励行しているにも関わらずシタグリプチンの効果が減弱することを指す“二次無効例”と証明できる症例はなかった」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)