勤医協中央病院(北海道札幌市)の伊古田明美氏

 勤医協中央病院(北海道札幌市)に20年以上継続通院が可能だった2型糖尿病患者150人を縦断的に検討したところ、HbA1cは改善したが、糖尿病性合併症動脈硬化性疾患は顕著に増加していることが分かった。5月17日から横浜で開催中の第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で同病院内科の伊古田明美氏らが発表した。

 対象は、同病院に20年以上通院することが可能だった2型糖尿病患者150人(男性62人、女性88人)。年齢は2011年現在で53〜91歳(平均年齢73.39歳)で、平均罹患期間は24.93年。カルテ調査に基づき、1991年(91期)、2002年(02期)、2011年(11期)の3期について臨床データを比較した。

 その結果、HbA1cは91期が7.96%、02期8.36%、11期7.38%で、11期には有意に低下した(91期との比較でP<0.05、02期との比較でP<0.001)。また91期にはばらつきが大きかったが、11期には7.1%〜7.5%が最も多く(中央値7.45%)、収束傾向が見られた。

 ところが、網膜症の発症率は経年的に増加し、腎症の病期は進行した。単純性網膜症(SDR)は91期で15.3%、11期には27.4%で、網膜症治療介入は91期で0.7%だったが、11期は34.5%に上った。

 大血管障害の出現も経年的に増加し、脳血管障害は91期が2.1%、02期11.6%、11期28.9%、心血管障害は91期が4.2%、02期20.9%、11期29.1%だった。11期には、認知症や癌も経年的に増加し、それ以外にも多彩な併存疾患を認めた。

 一方、治療法については、薬剤使用率が91期42.8%から11期91.3%に増加し、中でもインスリン使用は10.7%から51.0%へ、併用療法は0%から31.5%へと顕著に増加した(91期:食事療法57.1%、経口薬32.1%、インスリン単独10.7%、11期:食事療法8.7%、経口薬40.3%、インスリン単独19.5%、併用療法が31.5%)。

 伊古田氏は、「2型糖尿病患者の同一集団について20年以上の追跡調査を行った研究は稀だが、本研究で20年の病像変化が明らかになった。HbA1cは20年間で改善したが、これはインスリン使用や多剤併用などが増加し、あらゆる治療法を駆使して介入した結果と考えられる。しかし、網膜症や腎症などの重度の合併症や多彩な併存疾患は顕著に増加していることが分かった。この点については、おそらく血糖コントロール以外の原因があるのではないかと考えられる」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)