大阪市立大学大学院発達小児医学の渡邊香織氏

 1型糖尿病患者のインスリン治療においては食事の糖質量に応じて必要なインスリンを打つ応用カーボカウントが確立している。しかし、食後数時間後の血糖上昇に関与するとされる蛋白質や脂質の摂取については、その調整方法は確立されていない。1型糖尿病患者を対象に、CGM(持続血糖モニタリング)を用いて夕食に焼肉を摂取してもらったところ、カーボカウントでノーマルボーラスのみだと夜間から翌朝にかけて血糖上昇が見られた一方、寿司の場合には夜間の血糖上昇が見られなかったことが示された。大阪市立大学大学院発達小児医学の渡邊香織氏らが、5月17日から横浜で開催中の第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で発表した。

 対象は、平均年齢23.3歳の1型糖尿病患者6人(男性3人、女性3人)。平均罹患期間は16.2年、1日総インスリン量は54.1単位。夕食に焼肉を食べる日の前後の日の食事は、極端に蛋白質や脂質の高い食事を避け、標準食を摂取した。CGMは焼肉を食べる日の前日に装着し、翌々日に外した。インスリン・カーボ比、インスリン効果値、目標血糖値は通常通りに行った。

 焼肉の摂取カロリーは、平均2148.1kcalで、摂取量は蛋白質96.1g、 脂質103.9g、炭水化物182.8gで、脂質の摂取カロリーは総カロリーの半分近くを占めていた(蛋白質18.1%、脂質44.6%、炭水化物33.5%)。19時半から食事を開始し、22時に解散した。

 その結果、カーボカウントでノーマルボーラスしか行わなかった5人には、数時間後から翌朝にかけて血糖の上昇が一様に見られた。残る1人は、普段からスクエアボーラスを行っている患者で、今回の実験でも本人の希望でノーマルボーラス(14.1単位)に加え、スクエアボーラス(8時間3.1単位)、およびテンポラリーベーサル(10時間ベース基礎インスリン量130%、2.25単位)を行った。その結果、夜間の血糖上昇は見られず、翌朝に低血糖となった(朝食前に乳酸菌飲料を摂取)。

 一方、高蛋白でも、低脂質の寿司を摂取した場合の血糖上昇について調べるため、同様の検討を行った。

 こちらの対象者は、平均年齢25.7歳の1型糖尿病患者10人(男性8人、女性2人)。平均罹患期間14.3年、1日総インスリン量59.5単位/日。

 寿司の摂取カロリーは平均1460.3kcalで、摂取量は蛋白質77.0g、 脂質31.3g、炭水化物205.2g。炭水化物の摂取量が多く、普段の数倍に及んだ(蛋白質21.0%、脂質19.7%、炭水化物55.9%)。

 血糖上昇については、52貫食べた1人だけは眠前血糖補正を行っても夜間に血糖上昇が見られたが、それ以外の対象者では、食べた量はさまざまだったが(17〜47貫)、焼肉で見られたような夜間の血糖上昇はなかった。

 渡邊氏は、「高蛋白でも低脂質の寿司の場合には、酢飯のカーボカウントをしっかり行えば、血糖管理が可能であることが示唆された。焼肉のような高蛋白・高脂質の食事に対しては、スクエアボーラスかテンポラリーベーサルによるインスリン増量が必要で、どれくらい増量すればよいかを検討し、投与方法を確立する必要がある」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)