湘南鎌倉総合病院糖尿病内分泌内科の田中麻美氏

 ヒトGLP-1アナログ製剤であるリラグルチドを長期投与した2型糖尿病患者の追跡結果から、リラグルチド投与1年後、HbA1c、BMI、LDL-コレステロール(LDL-C)が有意に低下し、HDL-コレステロール(HDL-C)が有意に上昇したことが明らかとなった。また、リラグルチドに対して著効や離脱が得られた症例は、糖尿病罹病期間が短く、初回治療例が多い傾向が認められることが示された。5月17日から横浜で開催中の第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で、湘南鎌倉総合病院糖尿病内分泌内科の田中麻美氏が発表した。

 リラグルチドを2型糖尿病の病期のどの段階で用いるべきか、あるいは最適症例や長期効果に関しての知見はまだ少ない。そこで田中氏らは、リラグルチドを使用した2型糖尿病患者を対象に、有効、無効例と長期効果について検討した。

 対象は2型糖尿病患者105人(うち男性57人)。併用薬や前治療などの治療歴、投与後3カ月、6カ月、1年後のHbA1c(JDS値)、BMI、血圧、脂質値の変化を検討した。なお、HbA1c(JDS値)6.5%未満達成またはリラグルチド投与前から0.5ポイント以上低下した場合を有効例とし、そのうちHbA1c(JDS値)6%未満達成または2ポイント以上低下した場合を著効例、改善して薬剤を離脱した場合を離脱例とした。有効例以外を無効例とし、そのうち投薬中止した場合を中止例と定義した。

 患者背景は、年齢60.3±1.3歳、身長161.8±0.9cm、体重72.6±1.7kg、BMI 27.5±0.5kg/m2、HbA1c(JDS値)は7.7±0.16%、罹病期間は9±1年だった。投薬期間は6カ月以内が47人、7カ月〜1年間が58人で、前治療として経口薬を服用していたのは36人、インスリン治療(平均30単位)例は48人、経口薬+インスリン(BOT)例は14人、前治療なしが7人だった。

 リラグルチドとの併用薬については、リラグルチド単剤投与が58人、経口薬との併用が47人だった。

 追跡の結果、全対象者のHbA1c(JDS値)の推移は、リラグルチド投与前の7.7%から、3カ月後には6.8%まで低下、1年後まで低く維持された。有効例は53人で、うち著効例は19人、離脱例は6人だった。無効例は52人で、うち中止例は28人だった。無効例が多かった背景には、有効の基準を高めに設定したこと、インスリンからの切り替えの場合で効果が同等であれば無効と判断するなどがあると考えられた。また、無効例の中から同院で実施している治験に参加する症例がいることなどから、中止例が多かったと考えられた。

 BMIについては、リラグルチド投与前の27.5kg/m2から3カ月後は有意に低下し、1年後でも26.6kg/m2と低下していた。

 血圧は、収縮期血圧、拡張期血圧ともに投与前と比べて3カ月後に低下する傾向にあったが、半年後、1年後は投与前と比べて有意な変化はなかった。

 脂質値については、LDL-Cは投与前が111mg/dLだったのに対して徐々に低下し、1年後には100mg/dLと有意に低下、HDL-Cも投与前は53mg/dLだったが、半年後、1年ごと徐々に上昇し、1年後は57mg/dLと有意に高まった。中性脂肪も投与前に比べて3カ月後、半年後は有意に低下していた。

 有効例(53人)と無効例(52人)を比較した結果、年齢、開始時HbA1cには有意な差は見られなかったが、前治療として受けていたインスリン治療が無効例では平均36単位だったのに対して有効例では26単位と少なかった。また、無効例では未治療例はいなかったが、有効例では未治療例が7人だった。併用薬については、無効例に対して有効例でリラグルチド単剤治療が多かった。

 有効例のうち、離脱例(6人)と著効例(19人)について詳細に検討した結果、離脱例は46±3.8歳と若く、罹病期間も離脱例3.2±1.5年、著効例で6.2±1.7年と短かった。また、併用薬については、離脱例は全例リラグルチド単剤治療で、著効例でも単剤治療が12例と多かった。

 中止例(28人)については、開始時HbA1cは7.9±0.3%で、うち前治療が経口薬の場合では8.8±0.4%。前治療のインスリン治療は平均39単位と多く、経口薬併用例が多く見られた。罹病期間は9.5±1.2年だった。副作用として、1人がHbA1cが急激に悪化して中止、2人に肝障害、1人に動悸と全身浮腫が発生して開始1週間後に中止していた。

 これらの結果から田中氏は、「罹病期間が短い場合、リラグルチド単剤での治療は第一選択になり得ると考えられた。また、罹病期間が長い場合、インスリンの単位数やリラグルチド単剤での治療が可能かどうかを考慮すべきだ。罹病期間が長い場合、インスリン単位数が30単位を超える場合、経口薬服用者で肥満を伴っていても開始時のHbA1cが高い場合はリラグルチドへの変更は望ましくないと考えられた」と締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)