東京女子医科大学糖尿病センター内科の石澤香野氏

 高齢の2型糖尿病患者における認知機能の低下と血糖、血圧、脂質などの管理状況との関連については、一定の見解が得られていない。65歳以上の2型糖尿病患者でこれらの関係について検討したところ、拡張期血圧は年齢、性別などの他の因子で補正した後も、認知機能低下に独立して関連する因子だったことが分かった。東京女子医科大学糖尿病センター内科の石澤香野氏らが、5月17日に横浜で開幕した第55回日本糖尿病学会(JDS2012)で発表した。

 対象は、同センターに通院中の65歳以上の2型糖尿病患者で、認知機能検査を希望した27人。症候性脳梗塞の既往例、神経・精神疾患、重篤な肝・腎・心疾患や悪性腫瘍を合併している患者は除外した。

 認知機能検査については、3要素(遅延再生、見当識、視空間認知機能)を5問で検討するタッチパネル式簡易認知機能検査で行った。15点中12点以下の場合、認知機能が低下しているとした。その結果、認知機能正常群が12人(76歳、男性4人)、認知機能低下群が15人(78歳、男性6人)となった。

 両群の間で、年齢、性別、教育歴、診断後期間、BMI、網膜症や腎症の有無、血圧、HbA1c、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド、治療内容(降圧薬や脂質異常症治療薬の処方率など)について比較したところ、低下群では網膜症罹患率が有意に高く、拡張期血圧が有意に低かった。網膜症罹患率は正常群が36.4%、低下群が85.7%、拡張期血圧はそれぞれ76±8mmHg、63±6mmHgだった(順にP=0.011、P<0.001)。それ以外の項目については、両群間に有意差は見られなかった。

 なお、認知機能低下群のみ、神経内科専門医による認知症の精査(MMSE、長谷川式認知機能検査、神経心理課題、VSRAD[頭部MRI画像に対するアルツハイマー型認知症診断支援ソフト]、脳血流SPECT)を行った。精査が終了した13人の診断結果を見ると、前頭側頭型認知症(FTLD)と軽度認知障害(MCI)が4人ずつ、脳血管性認知症(VaD)は2人、アルツハイマー型認知症(AD)が2人(うち1人はVaDとの混合型)、失語症が1人だった。

 また、両群間に有意差があった網膜症罹患率と拡張期血圧について、その他の因子で補正してロジスティック回帰分析を行ったところ、拡張期血圧だけが認知機能低下の有意な因子として抽出された(オッズ比:0.769、95%信頼区間:0.619-0.957、P=0.019)。

 これらの結果を踏まえ石澤氏は、「高齢の2型糖尿病患者では、拡張期血圧が認知機能低下と関連する可能性が示唆された」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)