デンマークNovo Nordisk社のMarcus Niemeyer氏

 新規のプレフィルド・インスリン・ペン型注入器であるFlexTouchは、高い注入精度を有し、特に低用量設定における精度が既存の同タイプの注入器よりも高いことが示された。5月17日から横浜で開催中の第55回日本糖尿病学会(JDS2012)の初日のセッションで、デンマークNovo Nordisk社の研究者らの発表で、Marcus Niemeyer氏らが報告した。

 インスリンを適正に投与するためには注入量の精度が重要で、高い精度が維持されることで効果的かつ確実な血糖値コントロールが可能になる。近年、ペン型注入器の開発により用量設定や注入手技が簡便になり、現在ではペン型が主流だ。またペン型注入器は、従来の注射器に比べインスリンの注入量の精度を安定的に維持できることがメリットで、特に5単位(IU)未満の注入における精度が高いことが示されている。さらに、最新のプレフィルド・ペン型注入器は、低用量、中用量、高用量のいずれの設定においても、高い精度で注入が可能であることが示されている。

 Novo社の最新型のプレフィルド・ペン型注入器であるFlexTouchは、設定する用量の高低によって押しボタンが伸縮しない特徴があり、糖尿病患者の注入手技はより簡便になる。

 今回、同グループは、FlexTouchについて、低用量、中用量、高用量それぞれの用量設定における注入量の精度と一貫性を検証するとともに、既存のプレフィルド・ペン型注入器であるSoloStarおよびKwikPenと比較検討した。

 試験に用いるFlexTouchは、インスリンデテミル3mLを充てんしたものと、インスリンアスパルト3mLを充てんしたものの2種類を用意。SoloStarには、インスリングラルギン3mLを、KwikPenにはインスリンリスプロ3mLを充てんしたものを用意した。注射針は各薬剤のメーカーの推奨品を使用した。
 
 本検討においては、各ペン型注入器を2つの異なるロットから15本ずつ無作為に取り出し、合計30本ずつ使用した。さらにそれらの注入器を2回使用(反復テスト)し、合わせて60回の使用における注入量の精度と一貫性を比較した。低用量、中用量、高用量の設定は、KwikPenでは1、30、60 IU、FlexTouchおよびSoloStarでは、1、40、80 IUとした。試験環境は気温20±2℃、湿度45±7.5%に設定した。

 注入量の測定では、ペン型注入器の注射針の先から液剤が漏出するまで空気を抜いたあと、各設定単位(用量)を放出した。放出した用量をデンマークMettler Toledo社製のMettler AX1という測定装置で定量した。また測定結果は、各薬剤の密度の違いを補正して比較した。ISO(国際標準規格、ISO11608-1:2000)の基準値内にあるかどうかも評価した。

 解析の結果、FlexTouchにおいては、1 IUの設定で0.98±0.07(範囲:0.72−1.18)、40 IUの設定で39.86±0.33(範囲:38.98−40.63)、80 IUの設定で79.76±0.64(範囲:78.49−81.39)と設定単位との差は小さく、しかもISOの基準値内だった。反復テストを行っても、1 IU、40 IU、80 IUのすべてで設定単位との差は小さいと考えられた。

 他のプレフィルド・ペン型注入器との比較では、中用量および高用量においては、FlexTouch、KwikPen、SoloStarの間で有意差はなかったものの、FlexTouchにおける1 IUの設定ではSoloStarの1.14±0.22(範囲:0.49−1.39)に比べて有意に設定単位に近かった(P<0.0001)。なお、各ペン型注入器はすべての用量でISOの基準内だった。

 これらの結果からNiemeyer氏は「プレフィルド・ペン型注入器の注入量の精度と一貫性は、糖尿病患者のアドヒアランスを維持・向上させるためにも重要であり、それが良好な血糖コントロールと糖尿病合併症の抑制につながる。本検討により、FlexTouchは設定用量の違いを問わず、正確かつ確実なインスリンの投与が可能であることが示唆された」と語った。

(日経メディカル別冊編集)