聖マリアンナ医科大学代謝・内分泌内科の太田明雄氏

 持効型インスリン製剤グラルギンをベースとするBOT(Basal supported Oral Therapy)は、空腹時高血糖を改善するだけでなく、食後高血糖の改善効果も期待できることが報告された。札幌で開催された日本糖尿病学会(JDS2011)で、聖マリアンナ医科大学代謝・内分泌内科の太田明雄氏(写真)らが発表した。

 BOTは、SU薬で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者に対する有効な治療法だが、BOTが内因性インスリン分泌動態に及ぼす影響は明らかにされていない。そこで太田氏らは、BOTにより空腹時血糖値(FPG)を110mg/dL以下にした状態でのインスリン分泌能を、エネルギー調整食による食事負荷試験で評価し、BOTの血糖改善効果を検討した。

 対象は、中等量以上のSU薬(グリメピリド3mg/日、グリクラジド80mg/日、グリベンクラミド5.0mg/日以上)による治療にもかかわらず、HbA1c値(JDS値、以下同)が7.0%以上10.0%以下、FPGが140mg/dL以上の2型糖尿病患者35人。患者背景は、男性27人、平均年齢66.2歳、BMI24.2、罹病期間13.4年で、登録時の平均FPGは176.2mg/dL、HbA1c値は8.0%だった。

 これらの患者に対し、SU薬を継続した上で、グラルギンを追加投与。登録時と12週後、24週間後の早朝空腹時による食事負荷試験を実施し、血糖値(空腹時:FPG、食後2時間:2h-PG)とCペプチド値(空腹時:FCPR、食後2時間:2h-CPR)の変化を検討した。なお、グラルギンは2〜6単位で開始し、FPG 110mg/dL以下を目標に投与量を調節した。

 その結果、12週後、24週間後のFPGと2h-PG、FCPRは、いずれも登録時より有意に低下した(p<0.01)。しかし、2h-CPRは有意な変化を認めなかった。

 すべての患者でFPGは有意に低下したが、FPG 110mg/dL以下を達成できた患者は半数にも満たなかった。太田氏らは、これらのBOT responder群(n=15)と、血糖管理目標を達成できなかった non-responder群(n=18)の背景因子や治療に伴う各種パラメータの変化を比較することにより、BOTへの応答性を規定する因子を探索した。

 その結果、平均年齢、BMI、罹病期間、FPG、経口血糖降下薬の種類、用量などの背景因子は両群間で差がなかったが、FCPRに有意な違いが認められた(non-responder群:2.3ng/mL 対 responder群:1.6ng/mL、p<0.05)。治療を続けるにつれ、responder群のFCPRは低下したが(p<0.05:登録時 対 12週後、24週後)、non-responder群は変わらなかった。一方、12週、24週後の2h-CPRは、登録時に比べて両群とも変化がなかった。

 インスリン抵抗性の指標としてCPR-IR(FPG×FCPR/217.3)の変化を検討したところ、登録時点でnon-responder群よりも低い傾向にあったresponder群のCPR-IRは、12週、24週後には、さらに改善された(p<0.01、登録時 対 12週、24週後とも)。non-responder群でもCPR-IRの有意な低下がみられたが(p<0.01:登録時 対 12週後、p<0.05:登録時 対 24週後)、高度なインスリン抵抗性は残存し、両群間に有意差が認められた(12週後、24週後ともにp<0.01:responder群 対 non-responder群)。

 これらの結果より、グラルギンベースのBOTは、空腹時の血糖値とCペプチド値を低下させるだけでなく、インスリン抵抗性の改善を介して食後血糖値の低下をもたらすことが示唆された。また、インスリン抵抗性が増悪している患者ではBOTへの応答性が低いことが示された。太田氏は、「このような患者にはグラルギンの増量や、超速効型インスリンアナログの追加を考える必要がある」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)