藍野病院(大阪府茨木市)の吉田麻美氏

 2型糖尿病における認知症の発症を予防するためには、低血糖に留意しつつ良好な血糖コントロールを達成する必要がある――。この成果は、早期認知症診断支援システムVSRAD)による3年間の検討により明らかになった。藍野病院(大阪府茨木市)の吉田麻美氏(写真)らの研究成果で、札幌で開催された日本糖尿病学会JDS2011)で報告された。

 吉田氏らは、2型糖尿病におけるアルツハイマー型認知症の合併を予防する方策を検討するため、海馬傍回萎縮の進行度と関連する臨床指標を明らかにする目的で検討を行った。

 対象は同病院に通院中の2型糖尿病患者112人。在宅管理が可能な60歳以上で、男性54例、女性58例だった。年齢は69.8±8.6歳。HbA1c(JDS値、以下同)は6.4±0.9%だった。全症例に、頭部MRI検査を実施し、VSRADを用いて海馬傍回の萎縮度を測定し、肥満度や内部肥満、インスリン抵抗性、糖・脂質代謝、糖尿病合併症などとの関係を3年間にわたって比較検討した。

 海馬傍回の萎縮度は、関心領域における正のZスコアの平均値で求め、0〜1を「萎縮はほとんどみられない」、1〜2を「萎縮がややみられる」、2〜3を「萎縮がかなりみられる」、3以上を「萎縮が強い」とした。

 ベースラインから3年後までの萎縮進行度で、Zスコアの変化が0.1以上を萎縮進行群、0.1未満を萎縮不変群とし層別化したところ、萎縮進行群は32人、萎縮不変群は80人となった。この両群で臨床指標を比較したところ、食後2時間血糖、HbA1c、3年間の平均HbA1cにおいて、萎縮進行群が有意に高いことが明らかになった。食後2時間血糖は、萎縮進行群が218±60、萎縮不変群が190±46で、p値は0.038だった。HbA1c値は、萎縮進行群が6.7±0.7%、萎縮不変群が6.3±0.9%(p=0.0045)、3年間の平均HbA1cは前者が6.6±0.5%、後者が6.1±0.6%(p=0.00026)だった。

 萎縮の進行と関係する危険因子を分析したところ、萎縮進行群と萎縮不変群の間で有意差があった危険因子は、内臓脂肪型肥満(内臓脂肪面積100cm2以上)と低血糖が浮かび上がった。いずれも萎縮進行群で多く、それぞれのp値は0.030と0.0010となった。

 これらの結果から演者らは、「2型糖尿病におけるアルツハイマー病発症を予防するためには、低血糖に注意する血糖コントロールとその維持が必要であることが示唆された」と結論した。また、低血糖と同様に、内臓脂肪型肥満も萎縮進行の危険因子であることには留意すべきとも指摘した。

(日経メディカル別冊編集)