早期糖尿病腎症の診断指標の1つとして注目される尿中IV型コラーゲンIV-C)は、糖尿病の脳心血管疾患CVD)死亡の予知マーカーである可能性が報告された。糖尿病だけでなく、境界型糖尿病あるいは健康人においても、CVD死亡を予知するマーカーであることも示唆された。1万人余の最長10年におよぶ追跡調査の結果、明らかになった。広島原爆障害対策協議会健康管理・増進センターの吉良さくらこ氏らが、札幌で開催された日本糖尿病学会JDS2011)で発表した。

 吉良氏らは、早期糖尿病腎症の診断指標として用いられている尿中ミクロアルブミン(UMA)とIV-Cに着目、CVD死亡の予知マーカーとしての意義を検討した。

 対象は2000〜2005年に同健康管理・増進センターを受診した1万1625人(男性5966人、女性5659人)。登録時に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施し、UMAやIV-Cをはじめとする各種臨床検査を行った。対象者を2010年5月まで追跡し、死亡例についてはその死因を調査した。なお、死因の判定はICD9コードで分類し検討した。

 OGTTの結果に基づいて分類したところ、血糖正常群(4849人)、境界型糖尿病群(4939人)、糖尿病群(1837人)となった。性別(男性/女性)はそれぞれ2123人/2726人、2717人/2222人、1126人/711人だった。登録時の年齢は、順に68.3±6.5歳、68.5±6.4歳、68.1±6.3歳。平均観察期間は、5.6年、6.3年、7.3年となっていた。

 死亡例は、正常群が189人(死亡率/千人年;6.96)、境界型群が325人(同10.44)、糖尿病群が219人(同16.56)で、糖尿病群の死亡率が高かった。死因別の割合をみると、各群とも悪性腫瘍が多く、正常群で31.8%、境界型群で40.0%、糖尿病群で37.9%だった。今回着目したCVD死亡は、それぞれ25.4%、17.4%、18.7%だった。

 UMAあるいはIV-Cの指標としての可能性を検証するため、IV-C値7.0μg/gCr.未満を「正」、以上を「高」とし、またUMA値30mg/gCr.未満を「N」、以上を「M」とした上で、「正・N」「正・M」「高・N」「高・M」の4群に分類し比較検討した。全死亡およびCVD死亡率を分析したところ、糖尿病群のCVD死亡率(/千人年)は「正・N」「正・M」「高・N」「高・M」の順に、2.39、2.66、3.70、4.80となり、段階的に高値を示した。一方、正常群および境界型群でも、糖尿病群と同様、これらの順に高値となった。つまり、UMA値あるいはIV-C値が高いほど、CVD死亡率が高くなることが分かった。

 次にCVD死亡に関する因子をCox比例ハザードモデルを用いて検討したところ、耐糖能とIV-Cが有意な独立因子、UMAが関連する傾向のある因子であることが明らかになった。

 これらの結果から演者らは、「IV-Cは糖尿病のみならず境界型糖尿病、血糖正常の人においてもCVD死亡の予知マーカーであることが示唆された」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)