坂出市立病院糖尿病内科の大工原裕之氏

 入院による強化インスリン療法において、超速効型インスリン製剤としてグルリジンを投与する場合、リスプロを投与する場合に比べて低血糖発現頻度を低減し、さらなる血糖コントロールの改善が得られる可能性があることが報告された。坂出市立病院糖尿病内科の大工原裕之氏(写真)らが、札幌で開催された日本糖尿病学会(JDS2011)において発表した。

 坂出市立病院(香川県、216床)では、入院患者の毎食前および就寝前に測定した血糖値を1日4回365日、担当専門医に電話で報告し患者ごとに的確なBasal、Bolusの単位数を決定するという、徹底した入院強化インスリン療法を行っている。

 同院では2009年までは基礎インスリンとしてグラルギンを、超速効型インスリンとしてリスプロを用いて入院患者のインスリン強化療法を行ってきたが、2010年4月以降はリスプロをグルリジンに変更している。今回、入院インスリン強化療法において、リスプロを用いた場合とグルリジンを用いた場合による血糖コントロール指標に関し、レトロスペクティブに解析を行った。

 解析対象は、血糖コントロール不良のため、同院にて4週間のインスリン強化療法入院治療プログラムを受けた2型糖尿病患者で、退院後もインスリン強化療法を継続する予定の220人。70歳超の高齢者や、BMI 29以上の肥満、重度の糖尿病合併症を有する患者などは除外した。

 毎食直前にリスプロ、就寝前にグラルギンを投与するリスプロ群(116人)と、毎食直前にグルリジン、就寝前にグラルギンを投与するグルリジン群(104人)において、入院時の患者背景に有意な差は認めず、HbA1c値(JDS値、以下同)はリスプロ群で9.7%、グルリジン群で9.8%だった。

 強化インスリン療法後の血糖コントロールを検討したところ、毎食前および就寝前の血糖値は両群間に有意差は認められなかった。これは、空腹時血糖値110mg/dL未満を目指してグラルギンが適切量投与されていた、経口血糖降下薬の併用など、患者ごとに徹底したコントロールが行われていたためと考えられた。しかし、Bolusインスリン投与量は、リスプロ群の23.9単位に比べ、グルリジン群では28.2単位と有意に高かった(p<0.05)。Basalインスリン投与量に有意差は認められなかった。

 低血糖の発現(空腹時血糖値70mg/dL未満)は、リスプロ群で患者1人当たり8.8回の低血糖が認められたのに対し、グルリジン群では4.8回と有意に少なかった(p<0.001)。低血糖発現の時間帯をみると、リスプロ群では昼食前3.1回、および夕方〜夕食前2.4回に対し、グルリジン群ではそれぞれ1.2回と1.1回だった。血中インスリン濃度の推移を比較すると、投与後3時間以降、リスプロ群においてインスリン濃度がやや高く推移しており、低血糖を起こしやすくなった可能性が考えられた。

 入院時と退院時の血糖コントロール指標を比較したところ、HbA1c値の変化量については両群間で同等だったが、グリコアルブミンの変化量については、リスプロ群で−9.4%、グルリジン群で−10.4%と有意差が認められた(p<0.05)。

 以上の結果から大工原氏は、「入院強化インスリン療法において、グラルギンがBasalとして適切量投与されている場合、短時間で作用が消失するグルリジンを超速効型インスリンとして投与することにより、食前空腹時の低血糖発現が減少することが示された。低血糖を懸念することなく十分な単位のグルリジンを投与することが可能となるため、食直後の血糖値の上昇が抑制され、その結果としてグリコアルブミンの低下が認められたと考えられる」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)