筑波大学水戸地域医療教育センター内分泌代謝・糖尿病内科の堀川千嘉氏

 日本では糖尿病患者は、一般の人よりもエネルギー摂取量が低く、栄養素別の摂取状況は日本糖尿病学会の食事療法のガイドラインには概ね適合していることが明らかになった。また、日本の糖尿病患者は、欧米の糖尿病患者よりも低脂質食であることも分かった。日本人の2型糖尿病患者の実態を調査している大規模臨床研究であるJapan Diabetes Complication StudyJDCS)によるもので、筑波大学水戸地域医療教育センター内分泌代謝・糖尿病内科の堀川千嘉氏(写真)らが、札幌で開催された日本糖尿病学会(JDS2011)で発表した。

 欧米では糖尿病患者は肥満傾向にあり、食事制限や身体活動が奨励されるレベルに至っていないことが報告されている。一方、日本人糖尿病患者の食事摂取状況を調べた大規模な調査はなく、日本人の食事摂取状況は明らかでない。そこで堀川氏らは、日本人2型糖尿病患者の食事摂取状況と日本糖尿病学会の食事療法のガイドラインへの適合状況を調べた。

 対象は、全国59施設の40〜70歳の2型糖尿病患者1516人。1996年に実施した食物摂取頻度調査(FFQg)で有効な回答が得られた人で、HbA1c(JDS値)が6.5%未満の場合は除外した。

 対象者の基本属性は、年齢59±7歳、糖尿病罹病期間は11±7.1年、体重は58.4±9.3kg、BMIは22.9±3.0kg/m2、HbA1c(国際標準値)7.9±1.3%、インスリンの治療者は20.0%、経口薬のみの治療者は65.8%だった。

 食事調査には、日常の1〜2カ月程度の期間の栄養素および食品群別摂取量を推定するために使用されている調査票である食物摂取頻度調査 (FFQg)を用いた。計算には「エクセル栄養君」を使用した。

 その結果、対象者の摂取エネルギーは1737kcalで、3大栄養素のエネルギー比率は、炭水化物で53.6%、タンパク質で15.7%、脂質で27.6%だった。

 一般の健康な日本人の食物摂取状況を示すものとして当時の国民健康・栄養調査と比較すると、本研究対象者の1日のエネルギー摂取量は国民平均の2002kcalよりも低かった。

 栄養素別にみると、炭水化物のエネルギー比率が国民平均よりやや低めではあるが、3大栄養素のエネルギー比率は対象者と国民平均はほぼ同等だった。

 さらに、対象者の栄養素摂取状況と、日本糖尿病学会の推奨比率および欧米における比率を比較したところ、炭水化物エネルギー比率は、日本糖尿病学会の推奨比率(55〜60%)をわずかに下回っている程度だった。また、欧米諸国が提案している糖尿病治療食のエネルギー比率(45〜65%)には十分に適合していた。

 海外糖尿病患者の栄養摂取状況と比較すると、日本の糖尿病患者は米国、スペイン、ヨーロッパなどの欧米諸国の糖尿病患者よりも炭水化物エネルギー比率が高く、脂質エネルギー比率が低いことが分かった。一方で、アフリカや韓国の糖尿病患者と比較すると、炭水化物エネルギー比率が低く、脂質エネルギー比率が高いことが分かった。

 なお堀川氏は、本研究の限界点として、自記式調査票による調査であったため記入者の過大申告や過少申告の可能性があること、調査方法や質問紙の違いによる摂取推定量の誤差があることを挙げた。

(日経メディカル別冊編集)