木戸病院(新潟市)の津田晶子氏

 糖尿病治療の中断例には、非正規雇用で休みにくいなどの通院困難、失業などの経済的困難、病人の介護などの家庭的困難など、社会的危険因子を抱える人が多いことが報告された。調査に当たった木戸病院(新潟市)の津田晶子氏(写真)らが、札幌で開催中の日本糖尿病学会JDS2011)で発表、長期間の治療を中断の末に合併症を進行させてしまう症例はいまだに多いとし、対策を急ぐべきと訴えた。

 津田氏らは、長期間の治療中断の末、合併症の進行を体験した患者50人を対象に面談を実施した。その中で、健康感や家族背景、職業や社会背景、診療側の要因や糖尿病のタイプなどを把握し分析した。

 その結果、自分自身の糖尿病の状態を客観的に把握できていない点は、他の多くの糖尿病患者と同様であった。ただし、中断例には、社会的な困難が重なっている症例が目立つという特徴が浮かび上がった。

 社会的危険因子として、通院困難、経済的困難、家庭的困難の3項目の元で分析を行ったところ、以下の結果となった。

 通院困難としては、自営業、非正規雇用、不規則勤務、職場に健診がない、主婦など、仕事を休みにくい事情を抱える人や健診の機会がない人が32人(64%)だった。また、倒産やリストラなどによる失業、就職困難例など、経済的困難あるいは医療費の負担が困難な人が34人(68%)にのぼった。介護が必要な病人を抱えている、サポートする家族がいない、などの家庭的困難を抱えている人も28人(56%)と多かった。

 これらの社会的危険因子を複合的に抱えている人は、3因子が19人(38%)、2因子が23人(46%)、1因子が8人(16%)だった。なお、こうした面談を機に、生活保護手続きを19例(38%)で実施している。

 このほかの特徴としては、本格的進行性糖尿病の病型が多いこと、比較的若年の発症例が多いことも明らかになった。受診時の平均HbA1c(JDS値、以下同)は12.7%、平均体重減少は−13.1kg、インスリン治療は47例(94%)などだった。30歳未満発症例は18例だったが、40歳未満では42例と84%を占めていた。

 演者らは診療側の要因も分析したが、「健診診断時に紹介状が発行されなかった」(2例)、「糖が高いのでやせなさいとは言われたが、通院しなければいけないとは言われなかった」(4例)、「他疾患での受診時・入院時に糖尿病のことは言われなかったので大丈夫と思った」(4例)などの要因が把握できた。「病院を受診する時間がない」を挙げた人は25人で、この点について津田氏は、「たとえば土曜日に診療を行うとか、医療側の対策も必要」などと指摘した。

 津田氏は、東日本大震災を機に、こうした社会的危険因子を抱える糖尿病患者の急増が危惧されるとし、社会的危険因子を重視した対策を急ぐべきだと語っている。

(日経メディカル別冊編集)