日本生命済生会付属日生病院予防医学センター医務部長の住谷哲氏

 生活習慣への介入と高用量のメトホルミン投与を糖尿病治療開始時から行うことで、体重増加や低血糖症状を認めることなく、約26%の患者でHbA1c(JDS値、以下同)5.8%未満を達成することが可能であったことが示された。治療効果は肥満の程度と相関しなかった。一方、下痢症状により投与量を1500mg/日まで増量ができなかった例も19%あった。日本生命済生会付属日生病院(大阪市西区)予防医学センター医務部長の住谷哲氏(写真)が、5月19日から札幌で開催されている日本糖尿病学会JDS2011)で発表した。

 海外では、糖尿病の診断後に最初に行う治療として、生活習慣への介入とメトホルミンの投与が同時に開始されることが多い。しかし、日本人はインスリン分泌促進薬により治療されることが多く、メトホルミンは肥満でインスリン抵抗性がある患者に対してのみ選択される傾向がある。

 メトホルミンについては、日本では使用できる用量が少ないため効果が十分得られていないとの指摘があったが、2010年5月に、通常では1500mg/日まで投与可能な薬剤が発売された(最高投与量は2250mgまで)。

 そこで、住谷氏は、日本人の2型糖尿病患者に対して、診断後最初に行う治療として、生活習慣への介入と高用量のメトホルミン投与を選んだ場合の有効性を検討した。

 対象は人間ドックおよび定期健康診断を契機に2型糖尿病と診断された23人(男性20人、女性3人)。年齢は53±11歳、BMIは25.7±4.5kg/m2、空腹時血糖値(FPG)は182±59mg/dL、HbA1cは8.7±2.1%、eGFRは86.9±18.5 mL/分/1.73m2だった。診断時に著名な高血糖に伴う臨床症状を認める患者や、増殖性網膜症を有する患者、中等度の腎機能異常を有する患者(男性:血清Cr≧1.3mg/dL、女性:血清Cr≧1.2mg/dL)は除外した。

 診断後に、外来で生活習慣への介入とメトホルミン投与を開始した。メトホルミンは500mg/日より開始して2週ごとに増量。最終的な投与量は、750mgが3人、1000mgが4人、1500mgが13人、2250mgが3人だった。生活習慣への介入は、病院の栄養士によるカーボカウントを用いた個別食事指導および日常生活活動量の増加の指示だった。

 治療の結果、いずれの患者でもHbA1cは低下した。平均HbA1cは、治療開始時8.7±2.1%だったが、4週後7.8±1.7%、8週後7.2±1.3%、12週後6.6±0.9%、16週後6.2±0.8%と低下していた。HbA1cの管理目標値の達成率を調べたところ、治療前は、5.8%未満(優)はおらず、5.8%以上6.5%未満(良)も1人だけだった。しかし、16週後には、優が6人、良が9人になっていた。

 経過中に低血糖は1例も生じなかった。体重は、治療前の73.3±13.3kgが16週後には69.8±11.6kgと有意に減少していた(p<0.001)。

 治療開始時の体重によって治療効果が異なるかを調べるために、患者をBMI25未満(10人)と25以上(13人)の2群に分けて、治療効果(HbA1cの変化)を調べた。治療効果とBMIとの間に交互作用を認めず(p=0.449)、治療効果は肥満の程度と関連しないことが明らかとなった。

 FPG、グリコアルブミン(GA)、non-HDL-コレステロール(NHDLC)も16週後にいずれも有意な減少を示していた(p<0.001)。一方、メトホルミンの服用により減少することがある血清ビタミンB12は、治療前の544±340pg/mLから16週後に407±252pg/mLに減少していた(p=0.008)。

 一方の有害事象としては、1500mg/日への増量を試みた21人のうち、4人(19.0%)が消化器症状(全例が下痢)のため1500mg/日の服薬ができなかった。また、23人中2人(8.7%)に軽度の肝機能異常を認めた。

 住谷氏は、「日本ではメトホルミンは肥満の患者に使うの薬だと思われているが、今回の検討でそうではないことが示された。高齢者や腎機能低下者などでは副作用に注意が必要だが、特に30〜50歳代の比較的若い患者では、生活習慣介入と高用量のメトホルミンを糖尿病治療開始時から行うことで高い効果が期待できる」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)