HECサイエンスクリニックの平尾紘一氏

 2010年1月に日本で製造販売承認を取得したヒトGLP-1アナログ製剤リラグルチドについて、日本の第3相試験における投与後52週の有効性と安全性の報告が第53回日本糖尿病学会年次学術集会で行われた。HECサイエンスクリニックの平尾紘一氏が有効性について、朝日生命成人病研究所の大西由希子氏が安全性について報告した。

 日本人2型糖尿病患者に対するリラグルチドの第3相試験は、リラグルチド単独療法の評価(以下、単剤試験)とSU薬との併用療法の評価(以下、SU薬併用試験)の2つの試験が行われた。

 単剤試験では、リラグルチド0.9mgとグリベンクラミド2.5mgを比較。リラグルチド群(n=268)はリラグルチド0.9mgとグリベンクラミドのプラセボを投与し、グリベンクラミド群(n=132)はグリベンクラミド2.5mgとリラグルチドのプラセボを投与した。SU薬併用試験は、リラグルチド0.6mg+SU薬、リラグルチド0.9mg+SU薬、SU薬+プラセボの3群に割り付けた(いずれもn=88)。投与は24週まではダブルブラインド、以降28週はオープンラベルで行い、52週時点の各指標を比較した。

 両試験ともに、対象としたのは2型糖尿病を有する日本人で、HbA1c値 7.0〜10.0%をエントリーの基準とした。単剤試験については、「食事療法、または食事療法と経口糖尿病薬単独療法を8週以上実施している」、SU薬併用試験については「SU薬単剤治療を8週以上実施している」などの条件をエントリーの基準に加えた。被験者背景については、糖尿病治療に関する項目について、両試験で群間に有意な差はなかった。

 ベースラインから投与52週後のHbA1cの低下は、両試験でリラグルチド投与群が有意に大きかった。単剤試験におけるHbA1cの低下はリラグルチド群が1.48%、グリベンクラミド群が0.95%。SU薬併用試験では「リラグルチド0.6mg+SU」群が1.09%、「リラグルチド0.9mg+SU」群が1.30%、SU群が0.06%だった。

 HbA1c6.5%未満および7.0%未満に到達した患者の割合は、両試験でリラグルチド投与群が有意に高かった。単剤試験におけるHbA1c6.5%未満の到達割合はリラグルチド群で19.8%、グリベンクラミド群で8.3%。HbA1c7.0%未満の到達割合はリラグルチド群で36.9%、グリベンクラミド群で18.2%だった。SU薬併用試験におけるHbA1c6.5%未満の到達割合は「リラグルチド0.6mg+SU」群で13.6%、「リラグルチド0.9mg+SU」群で37.5%、SU群で4.5%。HbA1c7.0%未満の到達割合は「リラグルチド0.6mg+SU」群で30.7%、「リラグルチド0.9mg+SU」群で56.8%、SU群で6.8%だった。

 空腹時血糖値は両試験ともリラグルチド投与群が速やかな改善を示した。

 ベースラインから投与52週後の体重変化量は、単剤試験ではリラグルチド群が−0.75kg、グリベンクラミド群が+0.96kg。SU薬併用試験では「リラグルチド0.6mg+SU」群が+0.07kg、「リラグルチド0.9mg+SU」群が−0.03kgで、SU群は−1.07kgだった。

 層別解析の結果、ベースラインにおけるBMIや罹病期間とリラグルチド投与におけるHbA1c低下量の間に関連性は認められなかった。ベースラインにおけるHbA1c別の解析ではHbA1cが高かった症例ほどHbA1c低下量が大きいものの、目標HbA1c達成率は低くなる傾向が認められた。

朝日生命成人病研究所の大西由希子氏

SU薬減量で低血糖は少なく
 低血糖については、被験者自身による処置が可能で、血糖値を測定していないか56mg/dL以上であった場合を「低血糖症状」、被験者自身による処置が可能で、(自覚症状の有無にかかわらず)血糖値が55mg/dL以下であった場合を「重大でない低血糖」、被験者自身による処置が不可能だった場合を「重大な低血糖」と分類。投与期間中の低血糖の発現件数をカウントした。

 その結果、投与期間中の「重大な低血糖」は両試験ともにみられなかった。「低血糖症状」「重大でない低血糖」の発生率は、単剤試験においてリラグルチド群で0.51件/人・年と0.19件/人・年、グリベンクラミド群で2.74件/人・年と1.10件/人・年で、いずれもリラグルチド群が少なかった。

 SU薬併用試験では「リラグルチド0.6mg+SU」群で1.69件/人・年と1.44件/人・年、「リラグルチド0.9mg+SU」群で2.35件/人・年と1.37件/人・年、SU群で1.71件/人・年と1.29件/人・年だった。

 低血糖の頻度の週ごとの解析では、SU薬併用試験で投与直後にリラグルチド投与群で低血糖の発現が高い傾向があり、24週時点まではリラグルチド投与群の低血糖発現頻度が有意に高かった。主治医の判断によってSU薬を減量することで、低血糖の頻度は減少し、52週時点では各群間の有意差はみられなくなった。SU薬の減量が行われたのは、「リラグルチド0.6mg+SU」群で19例(21.6%)に28回、「リラグルチド0.9mg+SU」群で33例(37.5%)に52回、SU群で9例(10.2%)に16回だった。

 胃腸障害については、両試験ともにリラグルチド投与群で発現頻度が高かったが、一過性であり、頻度は経時的に減少した。

 また、リラグルチド投与群の約15%にリラグルチド抗体の発現が認められたが、HbA1cの変化量との相関は認められなかった。

 以上の結果から大西氏は、「リラグルチド1日1回投与は日本人2型糖尿病患者に有用だが、SU薬併用における低血糖の発現には十分な注意が必要」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)