関西電力病院院長の清野裕氏

 日本で2010年4月に承認されたDPP4阻害薬アログリプチンの国内臨床試験の結果について、関西電力病院院長の清野裕氏が第53回日本糖尿病学会年次学術集会で報告した。

 アログリプチンの国内臨床試験は、単独療法試験と各種経口血糖降下薬との併用療法試験が行われ、それぞれ投与開始から12週の二重盲検並行群間比較試験、12週以降40週間(52週後まで)の長期継続投与試験が行われた。

 単独療法の二重盲検試験では、プラセボとアログリプチン6.25mg、12.5mg、25mg、50mgの治療効果を比較した。投与開始から12週後のHbA1c値は6.25mg群で0.51%低下。HbA1c値の低下量はアログリプチンの用量依存的に増大し、アログリプチン50mgの低下量は0.82%だった。プラセボ群のHbA1c値は12週後に0.06%増加しており、いずれの投与量でもHbA1c値はプラセボ群より有意に低下していた(p<0.05)。

 12週後の食事負荷試験について、清野氏はアログリプチン25mgの結果を示し、プラセボと比較して、食後の血糖値増加の抑制、活性型GLP-1の増加が認められた。血中インスリン量については同程度だったが、「血糖の低下量の差を考慮すると、アログリプチン群ではインスリンは相対的に上昇した」(清野氏)。グルカゴンについても、食後の増加を抑制する傾向がみられた。

 併用試験においては、アログリプチン12.5mg、25mgと、αグルコシダーゼ阻害薬α-GI)、チアゾリジンTZD)、SU薬ビグアナイドBG薬)の併用を評価。α-GIとの併用については、α-GI+プラセボに比べてα-GI+アログリプチン25mgで12週後のHbA1c値は0.95%低下した(p<0.05)。同様にアログリプチン25mgとの併用による12週後のHbA1c値の低下は、TZDで0.77%、SU薬で1.00%、BG薬で0.86%だった(いずれもp<0.05)。

 空腹時血糖値、食後2時間血糖値についても、アログリプチン25mg併用による有意な低下(p<0.05)が上記すべての経口血糖降下薬で確認された。特に、α-GIとの併用では食事負荷後の活性型GLP-1が食後1時間および2時間も高値を持続。この現象について清野氏は「α-GIによって、小腸上部におけるGIPの分泌が抑制されて小腸下部のGLP-1分泌が増加し、DPP4阻害薬によってGLP-1の高濃度が持続するのではないか。食後2時間の血糖、あるいはそれ以降の血糖抑制につながる可能性がある」という解釈を示した。

 52週後までのフォローアップの結果については、アログリプチン25mg単独およびα-GI併用ではHbA1c値の低下が維持されていた。TZD併用では24週後からHbA1c値がやや上昇する傾向がみられ、体重の推移と合わせて、より長期の検討が必要とした。

 安全性については、単独療法、併用療法のいずれにおいても12週までの二重盲検試験では有害事象の頻度にプラセボ群とアログリプチン投与群の間に有意な差はみられず、52週の長期投与試験においても「忍容性は良好だった」(清野氏)。SU薬との併用における低血糖の発現については、併用試験において低血糖を発現した3例についての詳細を示し、「いずれも低血糖は軽度で、SU薬は比較的高い用量が投与されていた。臨床試験では大きな問題は確認されなかったが、(他のDPP薬と同様に)市場に出た後は十分な注意が必要」と注意を促した。

 アログリプチンは2010年4月に単独療法およびα-GI併用療法で製造販売承認を取得。2009年6月にTZD併用療法、2010年3月にSU薬併用療法とBG薬併用療法の追加申請が行われている。

(日経メディカル別冊編集)