愛媛大学大学院地域生活習慣病内分泌学の三宅映己氏

 著明な脂肪肝と耐糖能異常、肝機能検査異常、低HDL血症を伴う45歳未満の若年患者は、非アルコール性脂肪肝炎の高リスク群であり、慎重にフォローする必要があるとの知見を、愛媛大学大学院地域生活習慣病内分泌学の三宅映己氏らが明らかにし、第53回日本糖尿病学会年次学術集会で発表した。

 非アルコール性脂肪肝炎(以下、NASH)は、肝硬変肝不全肝癌へと進行する病態だ。非アルコール性脂肪性肝疾患(以下、NAFLD)のうち、肝生検で脂肪肝炎の所見が確認されたものをNASHと診断する。NASHと診断された患者の30%は約10年で肝硬変へと進行するほか、診断時に既に肝硬変まで進行している患者も多い。肝硬変症例での有効な治療法はないため、早期に診断する必要があるが、若年者での十分な検討はなされていない。このような背景から三宅氏らは、愛媛県内5施設の糖尿病外来においてNAFLD患者を集計解析し、若年NASHの臨床的特徴を明らかにするための検討を行った。

 対象は、飲酒量1日20g以下、肝機能検査異常(ASTおよびALTが30 IU/l以上、γ-GTP 70 IU/l以上)、画像検査で脂肪肝を認める――の3条件を満たし、かつ肝生検を施行した123例(男性65例、女性58例)。これらの対象者の平均年齢は52.5歳であり、耐糖能異常が74%と高率に認められた。以下、45歳未満を若年群、45歳以上を中高年群として解析を行った。

 まず対象者を若年NAFLD群(38例)と中高年NAFLD群(85例)に分けて比較した結果、若年NAFLD群は中高年NAFLD群と比較して、有意に男性が多く、血小板数(Plt、若年群24、中高年群20)、GTPが有意に高く(若年群123 IU/L、中高年群67 IU/L)、ヒアルロン酸が有意に低かった(若年群20、中高年群133)。代謝マーカーでは、若年群は中高年群と比較して、HDL-Cが有意に低く(若年群43mg/dL、中高年群52mg/dL)、中性脂肪(若年群187mg/dL、中高年群150mg/dL)、尿酸値(若年群6.8mg/dL、中高年群5.6mg/dL)が有意に高いという違いが見られた。CT検査所見では、若年群が中高年群と比較して、CT値(L/S比、若年群0.83、中高年群1.00)、内臓脂肪面積が有意に低かった(若年群115cm2、中高年群147cm2)。これらの結果から、若年NAFLD群は組織学的に軽症で、肝機能検査異常が高度、内臓脂肪量は少なかったが、脂肪肝は高度だったといえる。

 次に対象者のうち、NASH例について、若年群(15例)と中高年群(65例)に分けて比較した結果、若年群は中高年群と比較して、有意に男性が多く、BMI値(若年群29、中高年群27)も有意に高かったが、高血圧合併例(若年群13%、中高年群48%)は有意に少なかった。肝機能では、若年群は中高年群と比べて、血小板数(若年群24、中高年群19)、GTPが有意に高く(若年群163 IU/L、中高年群74 IU/dL)、ヒアルロン酸(若年群28、中高年群154)は有意に低かった。代謝マーカーでは、HDL-Cが有意に低く(若年群38mg/dL、中高年群49mg/dL)、LDL-C(若年群149mg/dL、中高年群122mg/dL)と中性脂肪(若年群182mg/dL、中高年群157mg/dL)が有意に高かった。CT所見ではCT値(L/S比)が有意に低い(若年群0.77、中高年群0.98)という結果だった。これらの結果から、若年NASH群はBMI高値で、肝機能検査異常が高度、脂肪肝も高度だったといえる。

そして最後に、このうち若年群38例を、NASH群(15例)と単純性脂肪肝(simple steatosis:SS)群(23例)に分けて評価した。

 臨床背景については、性別(NASH群は男性12例と女性3例、SS群は男性19例と女性4例)、平均年齢(NASH群、SS群のいずれも31歳)、BMI(NASH群29、SS群27)、高血圧合併(NASH群13%、SS群18%)と、両群間に有意差はなかった。

 肝機能検査値については、NASH群ではSS群と比較して、GPT(NASH群163 IU/l、SS群97 IU/l)とγ-GTP(NASH群96 IU/l、SS群71 IU/l)が有意に高値だった(いずれもp<0.05)。血小板数、プロトロンビン時間(PT)、フェリチン値、ヒアルロン酸濃度に関しては、SS群に比べてNASH群で高い傾向はあったが、有意差が認められなかった。

 代謝マーカーについては、NASH群はSS群と比較して、HDLが低値であり(NASH群38mg/dl、SS群46mg/dl)、遊離脂肪酸が高値だった(同0.66mEq/l、0.46mEq/l)(いずれもp<0.05)。総コレステロール、中性脂肪、LDL、HbA1c値、尿酸値に関しては差を認めなかった。

 腹部CT検査の所見の比較では、CT値(L/S比)、内臓脂肪面積、皮下脂肪断面積のいずれに関しても有意差がなかった。

 三宅氏は、これらの知見を総括して「若年NASHは、脂肪肝が強く、肝機能検査異常が高度であった。また、HDLが低値であることから肝臓での中性脂肪合成の亢進が示唆された」と述べ、その上で、「若年の外来患者で、著明な脂肪肝と耐糖能異常、肝機能検査異常、低HDL血症などを伴う症例は、NASHの高リスク群として、肝臓専門医への紹介を含めて慎重にフォローを行う必要がある」と提言した。

(日経メディカル別冊編集)