長崎大学病院生活習慣病予防診療部の中村寛氏

 インターフェロン(IFN)の投与を受けているウイルス性肝炎慢性骨髄性白血病の患者において、自己免疫性疾患の発症が報告されており、なかでも1型糖尿病の発症は近年増加傾向にある。また2009年には肝炎対策基本法が制定されたことから、今後IFN治療を受ける患者数は増えると予想される。こうした背景の下、日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会では、IFN治療中および治療後に1型糖尿病を発症した症例の全国規模の疫学調査を実施し、その結果を、委員会を代表して長崎大学病院生活習慣病予防診療部の中村寛氏が第53回日本糖尿病学会年次学術集会で報告した。

 この全国調査の目的は、IFN関連の1型糖尿病の発症予知マーカーを探索し、その臨床的・免疫遺伝学的特徴を把握することだ。本調査への協力が得られた施設に症例調査票を送付して症例を収集するとともに、PubMedや医学中央雑誌を用いて、わが国においてIFN治療中および治療後に1型糖尿病の発症を報告した文献を検索し、併せて症例の解析を行った。

 本調査では合計88例の症例が収集できた。このうち、男性は47例、平均53.5歳、2型糖尿病の既往例が14例、2型糖尿病の家族歴を有する症例が23例だった。臨床症状として、67例で口渇、多飲、多尿が認められ、55例では体重が減少していた。IFN治療の対象疾患はC型慢性肝炎が94%を占めていた。

 1型糖尿病の病型は急性型が80.7%で、緩徐進行型は8.0%、劇症型は5.7%であった。

 年次別に1型糖尿病発症例の報告数を調べたところ、リバビリン(RBV)が併用され、ペグIFNが使用されるようになった2000年代前半から報告数が増える傾向が認められた。また、IFN投与開始から発症までの期間は1.89年で、治療法別ではIFN単独療法群(2.99年)に比べて、ペグIFN/RBV併用群(0.81年)、IFN/RBV併用群(1.14年)では有意に短かった(ペグIFN単独群では0.94年)。

 1型糖尿病発症時の検査所見では、抗膵島抗体陽性率は94.3%、GAD抗体価は13205 U/mLと著しく高値で、GAD抗体陽性率も92.7%と高かった。また、HLA-DRのアレル頻度を調べたところ、対照群に比べてDR13の頻度が著しく高かったことから、DR13と1型糖尿病発症との関連性が示された。

 以上の検討から中村氏は、IFN治療を受ける患者は1型糖尿病の発症リスクがあり、治療中、治療後には定期的な血糖検査は必須であると指摘した。また、抗膵島抗体の陽性率が高かったことから、保存血清を用いて膵島関連自己抗体の1型糖尿病発症予知マーカーとしての妥当性を検討する必要があると語った。最後に、中村氏は、IFN投与前のHLA測定や投与中および投与後の定期的な膵島自己抗体測定は、IFN関連の1型糖尿病の発症予知マーカーとして有用である可能性があると締めくくった。

(日経メディカル別冊編集部)