松山市民病院内科の新谷哲司氏

 経口血糖降下薬に持効型インスリン製剤を追加しても血糖コントロールが十分でない2型糖尿病患者に対して、超速効型インスリン製剤グルリジンの1日1回投与を追加する「Basal-Plus」法を行った試験の結果を松山市民病院内科の新谷哲司氏が、第53回日本糖尿病学会年次学術集会で報告した。12週後のHbA1c値が有意に低下し、血糖日内変動に関しても有意な改善が得られるとともに、1日の注射回数が増加したにもかかわらず、患者のQOLの悪化は認められなかった。

 内服薬で血糖コントロールが不十分な症例に対するインスリン療法導入の手段として、内服薬はそのまま継続し、持効型インスリン製剤を1日1回追加する「BOTBasal supported Oral Therapy)」の有用性が数多く報告されている。しかし、この方法を用いても良好な血糖コントロールが得られない患者も存在する。そのような場合に対する次のステップとして、BOTに超速効型インスリン製剤を1日1回または2回追加するBasal Plus法が注目されている。

 一方で、昨年6月に、インスリン グルリジン(以下、グルリジン)が新たな超速効型インスリンアナログ製剤として発売された。グルリジンは、BOTに多く用いられる持効型製剤であるインスリン グラルギン(以下、グラルギン)と同じデバイスを使用できる唯一の超速効型インスリン製剤だ。新谷氏らは、BOTを行っても血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者に対し、グルリジンを用いたBasal-Plus法の有用性について検討した。

 対象は、経口血糖降下薬とグラルギンまたはインスリン デテミル(以下、デテミル)を併用するBOTを行ってもコントロールが不十分だった2型糖尿病患者17例。これらの患者に対して、グルリジンを患者の都合に合わせて朝夕のいずれかに1日1回追加投与する前向きの単剤介入試験を行った。試験開始前の平均HbA1cは7.4%、空腹時血糖値は105.1mg/dLだった。

 投与開始後、4週、8週、12週の時点でHbA1cと体重を評価し、12週の時点でITR-QOL(Insulin Therapy Related QOL)によるQOL評価と低血糖頻度の検討を行った。ITR-QOLは、インスリン療法を用いている糖尿病患者のQOLを評価する指標の1つ。

 試験対象者17例のうち、BOTにおける持効型インスリン製剤として用いていたのは、グラルギン10例、デテミル7例だった。経口血糖降下薬はグリメピリド15例、メトホルミン7例、ピオグリタゾン6例、ナテグリニド2例、ミチグリニド1例、ボグリボース2例だった。また、グルリジンの投与時刻は結果的に17例全例が夕方を選択した。

 その結果、試験開始時は7.4%だったHbA1c値は、12週後には7.0%と有意に低下した(p<0.05)。また、同意が得られた8例で血糖日内変動を見たところ、夕食後と眠前の血糖値が有意に低下し(p<0.05、p<0.01)、血糖プロファイルの改善も認められた。

 BMIは試験開始時が23.1、12週後が23.2であり、変化は認められなかった。低血糖頻度は、試験開始時の1.2回/月に対して12週後は0.9回/月で、低下傾向はみられたが有意差は認められなかった。

 12週後のITR-QOLについては、インスリン注射が1日1回から2回に増えたにもかかわらず、社会的活動、身体症状、日常生活、インスリン治療への感情、それらの合計のいずれについても有意差が認められなかった。

 以上の結果から、新谷氏は、「BOTを行っても効果不十分な2型糖尿病患者においては、グルリジンを用いたBasal-Plus法を行うことにより、体重増加や低血糖頻度の増加、QOLの低下などを来たさずに血糖コントロールを行える可能性が示唆された」と結論した。QOLの低下が認められなかった理由については、「被験者の約6割がグラルギンを用いており、グルリジンと同じデバイスを使えたことが一因ではないか」と推測している。

(日経メディカル別冊編集)