久留米大学内分泌代謝内科の賀来寛雄氏

 α-グルコシダーゼ阻害薬には、食後の満腹感を持続させて空腹感を遅らせる食欲抑制作用があり、これは消化管ホルモンGLP-1ペプチドYYの分泌増加やグレリン低値状態の延長を介した作用と考えられることが、健常者を対象にした研究で示された。久留米大学内分泌代謝内科の賀来寛雄氏(写真)が、第53回日本糖尿病学会年次学術集会で発表した。これらの効果は、糖尿病患者に用いた場合には体重減少につながることが期待され、治療上、有利に働くと考えられる。

 賀来氏らは、α-グルコシダーゼ阻害薬の食欲への影響と消化管ホルモン分泌に対する作用を明らかにすることを目的として、健常者18人(男性12人、女性6人、平均33歳、BMI 22)にクッキー負荷試験を行い、ミグリトール内服による血糖、インスリン、血中脂質、消化管ホルモン、食欲の変化を、内服しない場合と比較検討した。

 クッキー負荷は、早朝空腹時に試験食用クッキー1袋(592kcal、糖質75g、脂質28.5g)を食べてもらうことで行った。採血はクッキー負荷の前、1時間後、2時間後、3時間後に行い、食欲についてはvisual analog scaleを用いて空腹感と満腹感を定量的に評価した。

 クッキー負荷後の血糖値は、ミグリトール内服により、1時間値が有意に低下した(p<0.01)。これに伴い、血中インスリン値(IRI)も負荷後1時間値、2時間値が有意に低下した(ともにp<0.01)。 また、中性脂肪値は、ミグリトールを内服した場合の1時間値および2時間値が有意に低下し(ともにp<0.01)、遊離脂肪酸については、負荷後1時間値が有意に低下した(p<0.01)。

 食欲については、クッキー負荷から3時間後の空腹感が、ミグリトール内服により有意に減少し(p<0.05)、一方、満腹感は負荷3時間後も有意に高く(p<0.01)、満腹感が持続していることが示された。

 消化管ホルモンのうちGLP-1とペプチドYY(以下PYY)の血中濃度は、クッキー負荷の1時間後から3時間後までを通じてミグリトール内服により有意に上昇していた(すべてp<0.01)。一方、血中グレリン濃度は、ミグリトールを内服しない場合は食後にいったん低下した後に回復するが、ミグリトールを内服した場合は3時間後も低値の状態が続いていた(p<0.05)。

 GLP-1とPYYには食欲抑制作用があり、逆にグレリンは食欲を増進させる。このため、ミグリトール内服後に観察されたこれらの消化管ホルモンの分泌動態の変化は、いずれも食欲を抑制する側に作用したことが考えられる。

 以上の結果から賀来氏は、「ミグリトールはこれらの消化管ホルモンの変動を介して食欲抑制作用を発揮したと考えられる」と結論し、「ミグリトールによるGLP-1およびPYYの分泌増加は、糖質の消化吸収を遅らせ、小腸下部のL細胞への刺激を増加したためと推定される。グレリンへの作用は胃排泄の遅れによるものと考えられるが、腸管由来のグレリンに影響した可能性もある」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)