坂出市立病院内科の大工原裕之氏

 混合型インスリン製剤の1日2回投与でコントロール不十分な2型糖尿病患者は少なくない。本来は、入院して強化療法を導入することが望ましいが、入院治療ができない症例も多く、強化療法の受け入れは比較的困難である。そこで坂出市立病院内科の大工原裕之氏は、これらの患者を対象に1日1回投与のグラルギンによるBOTBasal supported Oral Therapy)に切り替え、変更後もコントロール不良の症例にはインスリン治療を強化していく段階的治療を試み、その結果を第53回日本糖尿病学会年次学術集会で報告した。

 対象は、食事・運動療法を行いながら混合型インスリン製剤を1日2回投与中で、HbA1c値7.0%以上の2型糖尿病患者126例。平均年齢は54.7歳、男性が65例、BMIは24.8で、糖尿病罹病期間は9.7年、インスリン治療期間は6.1年、混合型インスリン製剤の1日投与量は23.0単位だった。

 これらの患者を持効型インスリン製剤であるインスリン グラルギン(以下、グラルギン)を用いたBOTに切り替えた。グラルギンは混合型製剤1日投与量の80%量で1日1回投与し、朝食前の空腹時血糖値110mg/dL未満を目標に投与量を調節した。また、経口血糖降下薬としてグリメピリド0.5〜3.0mgとメトホルミン250〜750mgを併用した。

 BOTに切り替えて16週後の空腹時血糖値は145mg/dLから113mg/dL(p<0.01)に、HbA1c値は7.6%から6.8%(p<0.05)に、それぞれ有意に低下した。この時点でHbA1c値6.5%未満を達成したのは38例(30%)であった。インスリン投与量は25.6単位に増加したが、低血糖の発現件数は62例から21例に著しく低下し、かつその発現は緩徐で、倒れることはなく自分自身で対処できるなど、低血糖の質が変わったことが示唆された。

 16週間のBOTを行ってもHbA1c値が6.5%以上だった88例には、グラルギン投与と同じタイミングで超速効型インスリン製剤を1回追加投与、さらにコントロール不良の患者には朝夕の2回投与するBasal Plus療法に段階的に移行した。その結果、全体の81例(64%)がHbA1c値6.5%未満を達成した。

 さらにBasal Plus療法を行ってもHbA1c値が6.5%以上に留まり、かつ患者の同意が得られた場合に、朝昼夕の3回超速効型インスリン製剤を投与するBasal/Bolus療法に移行したところ、全体の89例(71%)がHbA1c値6.5%未満を達成し、BOTに切り替えてから44週後の平均HbA1c値は6.3%まで有意に低下した(p<0.01)。

 以上の検討から、混合型インスリン製剤の1日2回投与で血糖コントロールが不十分な症例では、まずグラルギンを用いたBOTに切り替えて空腹時血糖値を正常化させ、そこからHbA1c値6.5%未満を目指してBasal Plus、さらにはBasal/Bolus療法へと治療を強化していく段階的治療が有効かつ安全性の高い治療手段であることが示された。また、44週の長期にわたり確実な血糖改善効果が持続したことから、大工原氏は「インスリン段階的治療の導入は外来診療での管理が十分可能であり、その有用性は高い」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)