JA愛知厚生連豊田厚生病院内分泌代謝科の加藤大也氏

 2型糖尿病患者において厳格な血糖コントロールを達成するためには、混合型インスリン製剤を1日2回以上注射する必要がある。しかし、低血糖を高頻度に発現したり、複数回注射が継続困難な症例も見受けられる。このような2型糖尿病患者を対象に、持効型インスリンアナログ製剤グラルギンと経口血糖降下薬を併用するBOTBasal supported Oral Therapy)からの段階的治療に切り替えが可能かどうかを検討したKOU-LAN-1 studyの結果を、第53回日本糖尿病学会年次学術集会において、JA愛知厚生連豊田厚生病院内分泌代謝科の加藤大也氏が報告した。

 対象となった30例(男性18例)の患者背景は、平均年齢67.8歳、糖尿病罹病期間9.5年、総インスリン投与量20.4単位であった。前治療におけるインスリン投与量の70%に相当するインスリン グラルギン(以下、グラルギン)の1日1回朝食前投与に切り替え、経口血糖降下薬を適宜追加して12週後のHbA1c値、BMI、低血糖の頻度を評価した。切り替え後の経口血糖降下薬はグリメピリド0.5〜1.0mg/日あるいはミチグリニド30mg/日を用いた。

 切り替え時のHbA1c値は7.2%、BMIは24.1で、グラルギンを用いたBOTに切り替えても有意な変動は認められなかった。しかし、インスリン投与量は20.4単位から15.5単位に、低血糖の発現(30例全体)は41回から4回に、それぞれ有意に低下した(ともにp<0.001)。

 切り替え時からHbA1c値がHbA1c値の5%以上減少した症例を改善群、変動幅がHbA1c値の±5%未満あるいはHbA1c値が6.5%未満となった症例を不変群と定義したところ、改善群(5例)と不変群(17例)が全体の73.4%を占めた。また、不変群およびHbA1c値がHbA1c値の5%以上増加した悪化群(8例)では改善群に比べて糖尿病罹病期間が有意に長かった(それぞれp=0.045、p=0.013)。

 以上の検討から、混合型インスリン製剤の1日2回注射で頻繁に低血糖を発現したり、1日2回注射の継続が困難な症例のうち、グラルギンを用いたBOTの有効性が特に期待できるのは、(1)血糖コントロールが比較的良好で、(2)1日インスリン投与量が少なく、(3)罹病期間が短い症例と考えられた。また、BOTに切り替えることで低血糖の発現頻度の減少、注射回数の減少によるQOLの向上も期待できる。

 しかし、BOTへの切り替えによって血糖コントロールの改善がみられない症例も認められた。個々の症例の検討から、肝機能障害があり、罹病期間が長く、内因性インスリン分泌不全を有する症例では、BOTの効果が不十分となる可能性が示唆された。これらの症例では、患者の同意を得ながらBOTに追加インスリンを段階的に導入することで良好な血糖コントロールが可能となったという。

 もともと1日2回注射が困難な症例であったとしても、1日1回のグラルギンによるBOTのstep down療法により、患者のインスリン注射に対する精神的負担を軽減する中で、効果不十分な場合は、その後、追加インスリンを段階的に併用することにより強化インスリン療法にスムーズに移行できる可能性があると考えられる。

 加藤氏は、「患者の要望や治療反応性に応じたテーラーメードの治療法を採用することで、厳格な血糖コントロールの達成が実現できる」と締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)