東京女子医科大学糖尿病センター教授の内潟安子氏

 自発性低血糖症の原因として、サプリメントのα‐リポ酸をはじめとしたSH基をもつ薬剤を原因としたインスリン自己免疫症候群の頻度が高まっていることが、東京女子医科大学糖尿病センター教授の内潟安子氏らが行った全国調査により明らかになった。5月27日から岡山市で開催された第53回日本糖尿病学会で内潟氏が発表した。

 自発性低血糖症は、糖尿病治療薬の服用やインスリン治療とは関係がない低血糖症で、突然の震えから意識障害までさまざまな低血糖症状が見られる。1982年と1988年に東京女子医大が行った全国調査では、いずれでも、原因疾患の1位がインスリノーマで、2位が膵外腫瘍による低血糖症(NICTH)、3位がインスリン自己免疫症候群(IAS)だった。

 しかし、近年、学会発表や学会雑誌において、これらとは異なる自発性低血糖の症例報告が目立つようになってきた。症例の多くは、発症時にサプリメントや漢方薬を服用していた。

 そこで、内潟氏らは、20年ぶりに自発性低血糖症の実態を調査し、時代による原因疾患の相違を検討することとした。「病院便覧」から200床以上の病院(内科部長あて)と大学病院(内科および小児科教授あて)に、全2183通の調査依頼状を送付。調査に協力できると返答があった施設に、過去3年間の自発性低血糖の患者登録を依頼した。

 登録基準は、「低血糖症状があること」「70mg/dL以下の血糖値が判明していること」「糖質摂取で症状が消失すること」。明らかに糖尿病治療薬やインスリン注射による低血糖症と分かる症例は除外した。登録された症例が自発性低血糖症の定義に合致するかどうかの判定は、主任および分担研究者による判定会議で行った。

 倫理委員会承認後の2009年8月末から2010年1月末までに207例が登録された。その結果、原因疾患の1位はインスリノーマ54例(26.0%)で前回の調査と順位が同じだったが、2位インスリン自己免疫症候群(IAS)38例(18.6%)、3位インスリン拮抗ホルモン低下症が20例(9.6%)と、インスリン自己免疫症候群(IAS)とインスリン拮抗ホルモン低下症が頻度が高まっていた。

 前回は3番目に多かった膵外腫瘍による低血糖(NICTH)は今回は5位で8人(3.8%)。1疾患3例以下のものや診断不明例が合計29.0%を占めていた。

 インスリン自己免疫症候群(IAS)38例のうち、薬物との関連が疑われる21例の内訳をみてみると、α‐リポ酸が17例と最も多く、女性が94.1%を占めていた。そのほか、コエンザイムQ2が2例、抗リウマチ薬のブシラミンやバセドウ病治療薬のメチマゾールなどが疑われた例も1例ずつ報告された。α‐リポ酸、ブシラミン、メチマゾールはSH基をもち、これがインスリン自己免疫症候群の発症に関係している。

 また、インスリン拮抗ホルモン低下症20例の内訳は、ACTH単独欠損症8例、汎下垂体機能低下症7例、原発性副腎機能低下症3例、甲状腺機能低下症2例だった。

 そのほか、今回登録された症例で、低血糖症と関連していると報告された薬物やサプリメントの使用例は、アルコール9例、コハク酸シベゾリン(不整脈薬)3例、コエンザイムQ2例、漢方薬の男根増進薬2例があった。

(日経メディカル別冊編集)