筑波大学大学院内分泌代謝・糖尿病内科の平安座依子氏

 血清カリウム低値は、2型糖尿病の発症リスクを高める新たな独立した危険因子であることが、人間ドックを受診した健常者を対象とした大規模観察研究で明らかになった。筑波大学大学院内分泌代謝・糖尿病内科の平安座依子氏(写真)らが、第53回日本糖尿病学会年次学術集会で発表した。

 平安座氏らの研究で注目されるのは、低カリウム血症に該当しない正常範囲内の血清カリウム低値であっても2型糖尿病の発症リスクが増加することが示された点だ。こうした血清カリウム低値は今後、2型糖尿病発症の予測因子の1つとして、医療現場で活用できる指標となる可能性がある。

 これまでの知見では、健常者を対象とした少数例の検討で、低カリウム血症はインスリン分泌を低下させ、耐糖能障害の原因となる可能性が示されている。また、高血圧患者では利尿薬服用によって起こる低カリウム血症が耐糖能障害と強く関連し、血清カリウム値の低下が糖尿病発症リスクを増加させることも示されている。

 しかし、健常者における低カリウム血症と2型糖尿病の発症との関連を示した大規模臨床試験によるエビデンスはほとんど存在しないことから、平安座氏らは今回の検討を行った。

 対象は、虎の門病院の人間ドック受診者のうち初診後の5年間に4回以上受診した人。2型糖尿病や高血圧治療歴がある人、腎臓や肝臓に障害がある人、開始時のデータが欠損している人などを除外し、5938例を解析対象とした。平均年齢は49.0歳、男性75%、糖尿病家族歴13.7%、平均BMI 22.7、平均血清カリウム値4.1mEq/L(最小値2.8mEq/L、最大値5.4mEq/L)だった。

 これらの対象者において初診時の血清カリウム値と5年間の追跡期間中の2型糖尿病発症との関連について評価した。糖尿病発症の基準は、「空腹時血糖値≧126mg/dLまたは通院治療開始」とし、さらに基準として、HbA1c≧6.1%、またはHbA1c≧6.5%(いずれもJDS)を含めた場合も検討した。血清カリウム値は、3.7mEq/L未満、3.7〜3.9mEq/L、4.0〜4.2mEq/L、4.3mEq/L以上の4群に区分して評価した(正常範囲は3.7〜4.8mEq/L)。

 対象とした5938例のうち、5年間の追跡期間中に2型糖尿病を発症したのは255例だった。Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析によって算出した2型糖尿病発症の相対リスクは、血清カリウム値が4.3mEq/L以上の群を1とした場合、3.6mEq/L以下の群では2.26倍、3.7〜3.9mEq/Lの群では1.79倍だった。4.0mEq/L未満の血清カリウム低値は、ほかの危険因子とは独立して有意に高値を示す2型糖尿病発症の危険因子だった。

 2型糖尿病発症の診断基準にHbA1c≧6.1%、またはHbA1c≧6.5%を含めて解析した場合も同様の結果が認められ、診断基準によらず4.0mEq/L未満の血清カリウム低値群では糖尿病発症の相対リスクが有意に高い値を示した。

 以上の結果から平安座氏は、「本研究は観察研究であるため、血清カリウム値を上昇させることで2型糖尿病発症を予防できるとは言えないが、血清カリウム値を2型糖尿病発症の新しい予測因子として、臨床や検診の現場で活用できる可能性がある」と結論。血清カリウム低値が糖尿病発症に関与する機序として、膵β細胞においてATP依存性Kチャネルにより調節されるインスリン初期分泌量が低下することが原因として考えられることを補足した。

(日経メディカル別冊編集)