東京女子医大八千代医療センター糖尿病内分泌代謝内科の松浦宏之氏

 2型糖尿病患者を対象とした解析の結果から、頸動脈エコーによる動脈硬化所見とCTによる冠動脈病変の石灰化スコアの相関関係に性差があることが明らかとなった。女性はよく相関するが、男性は全く相関しないという結果だった。5月27〜29日に岡山で開催されている第53回日本糖尿病学会で、東京女子医科大学八千代医療センター糖尿病内分泌代謝内科の松浦宏之氏が発表した。

 従来、糖尿病患者の死因は脳血管障害が多かったが、近年、虚血性心疾患が増加してきている。しかし、糖尿病患者の場合、約2割は症状がなく、安静時心電図での発見も難しい場合があることから、冠動脈病変をスクリーニングするために頸動脈エコーが用いられることがある。

 同グループは、頸動脈エコーによって動脈硬化病変を評価した結果と多列検出器コンピュータ断層撮影(MDCT)によって冠動脈病変を評価した結果を用いてその相関を解析した。虚血性心疾患発症には男女差があることが知られていることから、この解析は性別に行っている。

 対象は、同センターを受診した2型糖尿病患者で、頸動脈エコーとMDCTを施行した115例。糖尿病性腎症3B期以上の症例は除外したが、それ以外にこの研究への登録に基準は設けていない。解析の対象とした患者の背景は、男性74例、女性41例、年齢は男性64.4歳、女性66.8歳、BMIは男性24.4kg/m2、女性26.0kg/m2、糖尿病罹病期間は男性10.3年、女性8.0年、高血圧合併例は男性62.2%、女性82.9%、脂質異常症合併例は男性60.8%、女性80.5%、HbA1c値は男性8.2%、女性8.9%だった。

 頸動脈エコーは頸動脈を4区画に分け、各分画で最も厚いプラークの総計をプラークスコアとした。MDCTは64列CTで、冠動脈石灰化スコアはAgatston Scoreを用い、Phillips社製ソフトを用いて算出した。

 解析の結果、男性のプラークスコアは8.03±0.70、女性は6.37±0.60で、男性に高い傾向が見られたが、男女間で有意差は見られなかった(p=0.10)。

 一方、冠動脈石灰化スコアは、男性630.3、女性157.8で有意に男性が高値だった(p<0.05)。狭窄部位も男性で有意に多かった(p<0.01)。

 この結果から、冠動脈石灰化スコアとプラークスコアの相関を検討したところ、男性では個人差が多く相関は全く見られなかった(R=0.07、p=0.52)が、女性では強い相関関係が見いだされた(R=0.389、p=0.01)。

 冠動脈石灰化スコア/プラークスコア比を検討した結果、男性124.0、女性24.4で、p=0.06と有意差は見られなかったが、男性で高い傾向が確認された。頸動脈プラークスコアが8未満の患者だけを対象に絞って解析した結果、冠動脈石灰化スコアは男性603.8、女性116.6で、男性で有意に石灰化スコアが高いことも明らかとなった。

 松浦氏は、この研究は登録基準を設けて患者を登録したものではないという制限を示しつつ、「頸動脈エコーで得られるプラークスコアは女性においては冠動脈病変のスクリーニングに有用であるが、男性では頸動脈エコーだけでなく臨床的危険因子などを考慮しつつ冠動脈病変を評価する必要があるのではないか」とした。また今後症例を積み重ね、相関に関与する因子の同定を進める考えだ。

(日経メディカル別冊編集)