大阪市立大学大学院発達小児医学教室の川村智行氏

 超速効型インスリンアナログ製剤として、インスリン アスパルトインスリン リスプロに加えて、インスリン グルリジンが発売され、3種類の製剤が使用できるようになった。大阪市立大学大学院発達小児医学教室の川村智行氏らは、持続皮下インスリン注入療法を行っている1型糖尿病患者を対象に、3剤の違いを比較検討するクロスオーバー試験を行い、その結果を第53回日本糖尿病学会年次学術集会で報告した。

 新たに発売されたインスリン グルリジン(以下、グルリジン)は、先行するインスリン リスプロ(以下、リスプロ)やインスリン アスパルト(以下、アスパルト)とは効果発現時間や作用持続時間に違いがあることが指摘されている。

 川村氏らの施設では約300例の1型糖尿病患者を外来で管理しているが、今回の試験の対象となったのは持続皮下インスリン注入療法を行っている143例のうち54例。クロスオーバー法を用いて、アスパルトを使用中の患者(41例)を「アスパルト継続群」と「グルリジン切り替え群」に分け、それぞれ2〜3カ月投与した後、「アスパルト継続群」はグルリジンに、「グルリジン切り替え群」はアスパルトにそれぞれ切り替え、さらに2〜3カ月投与した。リスプロ使用中の患者(13例)も、同様に2群に分け、それぞれ2〜3カ月ずつ投与した。評価項目は投与後のHbA1c値、インスリン投与量、患者の使用感想とした。

 アスパルトを使用中の患者のうち、「アスパルト継続群(26例)」のHbA1c値はベースラインの7.8%から2〜3カ月後に7.6%、グルリジンに切り替えた後2〜3カ月の時点で7.7%と推移した。一方、「グルリジン切り替え群(15例)」では、ベースラインの7.2%が、グルリジンに切り替えて2〜3カ月後の時点で7.0%、アスパルトに戻して2〜3カ月後の時点で7.0%と推移したが、両群とも有意な変動は認められなかった。

 ベースライン時点でのインスリン投与量は0.9単位、「bolusインスリン量/totalインスリン量」比は0.57〜0.58で、いずれも超速効型インスリンアナログ製剤の切り替えによる変化は認められなかった。リスプロを使用中の患者においても、結果は同様であった。

 使用感想を尋ねたところ、アスパルトを使用していた患者41例のうち、22例が「グルリジンとの違いを感じない」と回答したが、12例は「グルリジンの方がよい」と回答。7例は「アスパルトの方がよい」と回答した。一方、リスプロを使用していた患者13例では、「違いを感じない」6例、「グルリジンがよい」4例、「リスプロがよい」3例という回答だった。

 「グルリジンの方がよい」と回答した患者にその理由を尋ねると、「回路交換の日に血糖上昇が少ない」(8例)、「効果発現が早い」(7例)、「持続時間が短い」(5例)、「低血糖が減った」(1例)、「インスリンをリザーバーに吸引しやすい」(3例)、「穿刺部のかゆみがなくなった」(1例)などが挙がった。

 3種の超速効型インスリンアナログ製剤の血糖コントロール、インスリン投与量に有意差は認められなかったものの、使用後の印象では約3分の1の患者が「グルリジンの方がよい」と回答したという結果を受け、川村氏は「他の超速効型インスリンアナログ製剤で血糖コントロールが良好でない場合、グルリジンへの切り替えを試みてもよいのではないか」と締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)