東海大学腎内分泌代謝内科の豊田雅夫氏

 強化インスリン療法を行っている糖尿病患者において、超速効型インスリン製剤を従来のインスリンアスパルトまたはインスリンリスプロからインスリングルリジンに切り替えたところ、HbA1c、インスリン投与量、体重変化など、同様の効果を得られることが明らかになった。さらには、患者の使用感を検討したところ、「グルリジンを継続したい」と回答した患者が65.2%に上ることを、東海大学医学部腎内分泌代謝内科の豊田雅夫氏(写真)が、岡山市で開催されている第53回日本糖尿病学会年次学術集会で報告した。

 強化インスリン療法は、速効型と中間型の組み合わせが中心であったが、最近では基礎インスリンを患者に合った最適な用量で補充しつつ、その上で食後の追加分泌をより忠実に再現して急激な過血糖を防ぐ目的で、持効型と超速効型の組み合わせによる治療が主流となってきている。

 これまで我が国では超速効型のインスリンアナログ製剤としてインスリンアスパルト(以下、アスパルト)とインスリンリスプロ(以下、リスプロ)の2剤が用いられてきた。2009年6月に国内で3剤目となるインスリングルリジン(以下、グルリジン)が発売され、選択肢が広がった。グルリジンはアミノ酸置換や亜鉛を含まないという特徴的な製剤設計から、皮下投与後に速やかに吸収され短時間で消失すると考えられているが、その有用性に関する国内の報告はまだ少ない。豊田氏らはこうした理由から、強化インスリン療法における超速効型インスリン製剤を従来のものからグルリジンに切り替えた糖尿病患者の経過について検討した。

 対象は、2009年7月から2009年11月までに超速効型インスリン製剤をアスパルトまたはリスプロからグルリジンへ変更した患者143例。切り替えは同単位での変更を基本とし、切り替え前後のHbA1c、1日インスリン投与量、Basal-Bolus比率、体重の変化を評価した。112例については切り替え前後での使用感についてのアンケートも実施している。患者の多くは2型糖尿病であり、平均年齢は59.7歳、平均BMIは24.7だった。

 その結果、解析対象とした122例の切り替え前後(平均観察期間3.7カ月)でのHbA1c値は、6.65±0.95%→6.65±0.90%であり、同様の効果が得られた。Basal-Bolus比率は42.6±19.7%から41.5±18.9%、1日インスリン投与量は31.7±16.7単位/日から31.8±17.7単位/日と、いずれも有意な変化はなかった。体重も有意な変化はみられなかった。

 一方、グルリジンの使用感について患者にアンケートをとったところ、「グルリジンの方が良い」と答えた患者が45.5%(51人)とほぼ半数を占め、「変わらない」は26.8%(30人)、「以前の製剤の方が良い」は27.7%(31人)だった。また、今後どの製剤を継続使用したいかを尋ねたところ、「グルリジン」との回答が65.2%(73人)で、「以前の製剤」は30.4%(34人)、「両方」が4.5%(5人)だった。

 以上の結果から豊田氏は、「グルリジンは従来製剤と同様な効果があることが明らかになった。患者へのアンケートの結果からは、新しい超速効型インスリンアナログ製剤に対する期待感が強いことがうかがえる」とまとめた。また、グルリジンの方が使用感が良いという回答が多かったことについては、「詳細な理由は明らかではないが、血糖コントロールが改善されたことや、デバイスの使い心地の良さなどが総合的に反映された結果ではないか」と同氏はみている。

(日経メディカル別冊編集)

【訂正】2010.6.1に以下を訂正しました。
・第6パラグラフで、「「グルリジン」との回答が65.2%(34人)で、「以前の製剤」は30.4%(73人)」とあったのは、「「グルリジン」との回答が65.2%(73人)で、「以前の製剤」は30.4%(34人)」の誤りでした。