2008年4月の診療報酬改定で糖尿病合併症管理料が新設され、糖尿病のフットケアの普及が期待されている。しかし、院内での運営体制の構築はなかなか進まないという現状を、国立病院機構京都医療センターWHO糖尿病協力センター長の河野茂夫氏が報告。第52回日本糖尿病学会年次学術集会のワークショップ「フットケアをめぐって」の中で、国立病院機構が実施するフットケア研修の受講者へのアンケート結果から、現場の看護師の状況や悩みなどを紹介した。

国立病院機構京都医療センターWHO糖尿病協力センター長の河野茂夫氏

 糖尿病合併症管理料は、糖尿病足病変のハイリスク患者に対し、医師あるいは看護師が指導・管理を行うと、月1回170点を算定できる。看護師が行う場合、糖尿病足病変の看護の実務経験(5年以上)と、フットケアの研修(16時間以上あるいは2日程度)の受講が求められている。

 国立病院機構は08年8月にフットケア研修を実施し、83施設117人(そのうち機構外からの参加は12施設12人)の看護師が受講した。河野氏らは研修会の直後と2カ月後に、フットケアの実情を尋ね、研修の効果、フットケアを広げるための課題などを分析した。

 参加者の経験を尋ねると、フットケアの指導歴「あり」は67.2%、足のチェックの経験「あり」が75.8%と、基本的には経験者が多数を占めていた。ただ、足のチェック内容の内訳(複数回答)をみると、視診は95.7%、触診は68.1%が行っていたものの、神経障害の検査を行っている看護師は少なく、「アキレス腱反射」6.4%、「振動覚」4.3%、「モノフィラメント検査」23.4%という結果だった。

 爪切りについては「経験あり」が65.0%。誰の判断で爪切りを実施したかを尋ねると「自己判断」65.8%、「患者からの依頼」65.8%で、「医師からの依頼」は10.5%に過ぎなかった。また、潰瘍・壊疽の大きなリスクとなる胼胝については、処置の経験「あり」は11.7%にとどまっていた。

 研修から2カ月後の状況を聞くと、2カ月の間に「フットケア指導をした」のは63.9%、「足のチェックをした」のは73.0%にのぼったが、「定期的なフットケアを行っている」のは31.8%にとどまっていた。外来においてフットケアをできる場所と時間については、39.0%が「場所も時間もない」、25.4%が「時間がない」、5.1%が「場所がない」と回答。フットケア研修はとりあえず受講しても、その後の体制整備にはなかなか結びついていない状況が示唆された。

 マンパワー不足に加えて具体的な問題点として挙がったのは、「看護師が担当する範囲などについて、院内の取り決めが必要」「相談する皮膚科医がいない」「糖尿病患者の足に対応できる靴屋を知らない」「(2日間の研修に加えて)スキルアップの研修機会がほしい」「情報交換や相談の体制がほしい」といったものだった。

 一方、研修受講者の所属施設の糖尿病担当医に、看護師に期待するフットケアを尋ねると、44.7%が「詳細な足診察、定期的指導、実際の処置」を求めた。処置については、74.4%が「病変爪の爪切り」、41.0%が「胼胝の切除」、33.3%が「鶏眼の切除」を期待しており、医師が求めるレベルと看護師の実情の乖離が示唆された。

 「糖尿病外来の現状を考えると、足病変を医師がスクリーニングすることは難しいだろう。看護師に委ねることが現実的だが、そのためには、リスクアセスメントの共通書式、指導の内容を簡略化して示すマニュアルなど、フットケアの標準化をまず進めなければならない」。質疑の中で河野氏は今後の課題をこうまとめた。