名古屋大学医学部代謝性疾患学寄付講座、名城大学大学院薬学研究科病態解析学 I の吉村智子氏

 SU薬グリメピリドアディポネクチンを増加させることが、新たに開発されたヒト大網脂肪由来幹細胞ADSC)による実験系で確認された。アディポネクチンの増加は、チアゾリジン系薬剤とは異なり、PPARγの増加を伴わずに認められることも分かった。第52回日本糖尿病学会年次学術集会の5月24日、ポスターセッションにおいて報告された、名古屋大学医学部代謝性疾患学寄付講座名城大学大学院薬学研究科病態解析学 I の吉村智子氏(写真)らによる研究である。

 アディポネクチンは、TNF-α、遊離脂肪酸、レジスチンなどといったインスリン抵抗性を亢進させるサイトカインに拮抗的に働くアディポカインで、脂肪組織から大量に分泌される。糖尿病患者では血中濃度が健常人より低いことが知られている。

 SU薬がアディポネクチンを増加させるという報告は、すでにいくつかなされている。臨床においては、グリメピリドを内服している2型糖尿病患者で、インスリン抵抗性改善あるいはHDL-コレステロール改善とともに、アディポネクチン血中濃度が上昇することが報告されている。in vitroでは、マウス由来3T3-L1細胞系を用いた実験により、グリメピリドとグリベンクラミドでアディポネクチン増加作用が確認されている。ただし、3T3-L1細胞系を用いた薬効評価には種差の問題がある。そこで吉村氏らは、ヒト大網脂肪組織から採取したADSCを培養し、成熟脂肪細胞を得る方法を開発、今回の検討に使用した。

 16例の開腹手術時に得られたヒトADSCを、すでにアディポネクチン増加作用が報告されているチアゾリジン系薬のピオグリタゾン、またはグリメピリドを添加した培地で培養、脂肪分化誘導して、各種アディポカインの発現を3週間観察した。

 アディポネクチンの発現量は、いずれの薬剤を添加した場合も、非添加時に比べて有意に増加していた。増加の程度は、ピオグリタゾンで約27倍、グリメピリドで約6倍であった。また、成熟脂肪細胞の主要な細胞質蛋白で、脂肪酸排出に関与するとされるFABP4(Fatty acid binding protein 4)の発現量も増加が認められた。これに対して、アディポネクチンの発現制御因子の1つとされるPPARγの発現量は、ピオグリタゾンで有意に増加したが、グリメピリドでは有意な増加が見られなかった。

 以上の結果から、吉村氏は「グリメピリドはチアゾリジン系薬剤とは異なり、PPARγの発現増加を伴わずに、アディポネクチンを増加させる可能性が示唆された」と結論した。アディポネクチン増加作用は、グリメピリドの新たな膵外作用として今後、注目されると思われる。
(高橋義彦=医学ライター)