北里研究所病院糖尿病センターの山田悟氏

 持効型インスリン製剤のインスリングラルギン(グラルギン)とインスリンデテミル(デテミル)を比較すると、グラルギンの方が血糖降下作用が強かったが、低血糖は少なく、また血糖降下作用の日差変動が小さかった。1日4回注射法の基礎インスリンとして就寝前にそれぞれ同量投与した際の血糖の推移を、連続的血糖モニタリングシステム(CGMS)を用いて解析した結果、明らかになった。北里研究所病院糖尿病センターの山田悟氏(写真)が5月23日、第52回日本糖尿病学会年次学術集会の一般口演で報告した。

 持効型インスリン製剤は、ほぼ一定の作用を24時間持続させ、生理的なインスリン基礎分泌の再現を目指すインスリン製剤である。現在、グラルギンとデテミルが使用されている。2剤の作用持続メカニズムは異なるが、血糖降下効果の持続時間に対する報告は様々であり、1型糖尿病を対象とした検討で、デテミルの作用は24時間持続しなかったとの結果も報告されている。ただし、ほとんどが海外の報告で、日本人を対象とした検討は非常に少ない。しかも、グルコースクランプ試験を用いたものが中心である。

 山田氏らは、日常生活における血糖の推移を連続的に最長72時間測定できるCGMS(Continuous Glucose Monitoring System:Medtronic社製、国内未承認)を用いて、1日4回注射法の基礎インスリンにおける2剤の血糖コントロール状況を比較した。CGMSで実際に測定されるのは間質液グルコース濃度だが、血糖値と強く相関することが確認されている。

 対象は、同院で2008年4〜12月に1日4回注射法を行っていた外来糖尿病患者のうち、主治医が中間型インスリン製剤(NPH)から持効型インスリン製剤への切り替えが必要と判断し、患者の同意が得られた11例。解析は、プロトコール逸脱による脱落2例を除いた9例(男性3例、女性6例)で行った。9例の平均年齢は64歳、1型糖尿病4例、2型糖尿病5例で、平均罹病期間は17年、平均インスリン使用期間は9年であった。

 対象症例を無作為に2群に分け、NPH―>グラルギン―>デテミル変更群と、NPH―>デテミル―>グラルギン変更群によるクロスオーバー法で検討した。各インスリンを8日以上投与し、それぞれの投与終了前3泊4日でCGMSによる血糖測定を行い両群における推移をみている。インスリン投与量は、低血糖などにより変更が必要と判断された場合を除き、変更しないこととした。

 平均血糖値はグラルギン172mg/dL、デテミル188mg/dLと、グラルギンで有意に低かった。血糖値が180mg/dLまたは140mg/dLを超えていた時間の血中濃度曲線下面積(AUC)は、いずれもグラルギンがデテミルに比べて有意に小さかった。

 また、180mg/dLを超えていた時間の割合はグラルギンで低い傾向が認められた。一方、低血糖(70mg/dL未満)の累計時間は、全測定時間、夜間のみともグラルギンのほうが短かった。これらの結果から、山田氏は「グラルギンはデテミルに比べ、血糖降下作用が強いにもかかわらず、低血糖の増加は見られない」と指摘した。

 さらに、血糖の日差変動を、24時間前の血糖値との差を連続観察して得られるMODD(mean of daily difference of blood glucose)を指標として検討すると、全測定時間でグラルギンのMODDがデテミルに比べて有意に低かった。この結果から、グラルギンのほうが血糖降下作用の日差変動が小さいことが示唆されたという。
(高橋義彦=医学ライター)