滋賀県甲賀市の甲南病院薬剤部の酒井孝征氏

 外来でのインスリン注入手技の確認には時間がかかるという「思い込み」から、確認調査の実施に踏み込めないでいる医療施設は少なくないのではないだろうか。しかし、仮に患者の注入手技がうまくいっていない場合は、血糖コントロールに悪影響を及ぼしかねない。滋賀県甲賀市の甲南病院薬剤部の酒井孝征氏らは、こうした問題意識のもとに注入手技教育ツールを活用した確認調査に取り組んだ結果、15分でほとんどの人のインスリン注入手技を確認することができるようになったという。その成果を5月21日、第52回日本糖尿病学会年次集会のポスターセッションで発表した。

 酒井氏らも、外来でのインスリン注入手技の確認には時間がかかるという意識があったため実行をためらっていた。しかし、注入手技の確認が必要なことは十分に理解しており、取り組みに向けた検討を重ねていた。ただ、一から確認のためのチェック項目を考えるには時間がかかり、また、薬剤部の他の業務との兼ね合いから、より効率的に確認作業を進める目的で、メーカーが発行している注入手技教育ツールを採用した。

 今回は、2007年12月10日から2008年3月4日までに、同病院の外来を受診したインスリン治療中の糖尿病患者66人(女性37人、男性29人、平均年齢70.7歳)を対象に確認調査を行った結果を報告した。

 「時間がかかる」ことが外来での確認調査実施の障壁だったわけだが、今回の調査では、たとえば実施開始から1カ月で約6割の患者で確認作業が終了し、かつ、1人当たりに要した確認時間をみると78.8%の人が15分以内で終了できていた。

 確認調査は、「針をまっすぐつけているか」「注射場所を毎回変えているか」「注入ボタンは最後まで押し切れているか」などといった15項目のチェック項目ごとに、インスリン注入手技を確認し、「全くできていない」「ほとんど理解していない」「理解が不十分」「もう少し理解が必要」「よく理解できている」の5項目で評価していく。その結果、今回の報告では、外来患者の注入手技の問題点も浮き彫りになった。たとえば、「針を上に向けて空打ちができていない」「ボタンを押しても6秒以上、カウントできていない」「製剤の名前、色などは覚えていない」などの項目で、評価が低い傾向がみられた。

 特に「針を上に向けて空打ちができていない」は、空打ちが手首の関節に負担のかかる動作を含んでいるため、うまくできていない人がいたという。また、「ボタンを押しても6秒以上、カウントできていない」は、押し切ることの必要性は多くの人が認識していたにもかかわらず、うまくでいきていない人が目立った。

 こうした外来患者のインスリン注入手技の不具合は、確認調査をして初めて把握できたものであり、酒井氏らは「15分以内で8割近い人で確認調査ができることは、他の施設での参考になるのではないか」などと考察していた。

《訂正》
発表者の名前に誤りがありました。お詫びし訂正いたします。(5/27)