日本の膵臓移植は、欧米以上にドナー不足にあえいでいる。臓器移植法が施行後、2000年4月から2008年12月までに54例の膵臓移植例があった。が、その一方で待機リストに登録された人は154人に上っている。この間、待機中の死亡は23例、重症化によるリストからの末梢例も15例と増えてきている。大阪大学大学院伊藤壽記氏は5月22日、第52回日本糖尿病学会年次集会のFeatured Symposium「1型糖尿病治療の新時代」で、現状の報告と今後の展望を語った。

 伊藤氏はまず、移植を受ける側であるレシピエントの現実を紹介した。それによると、日本臓器移植ネットワークの待機者リストには、2009年3月2日現在、腎臓単独移植で1万1889人、膵腎同時移植(SPK)で128人、腎移植後膵移植(PAK)で21人、膵単独移植(PTA)で8人がそれぞれ登録している。また、登録機関中の死亡は23人にのぼり、糖尿病性合併症などの進行や重篤化で登録を抹消せざるを得なかった人も15人いると指摘した。待機期間の長期化が進んでいることから、事態の悪化を懸念する声も強い。

 深刻なドナー不足が最大の課題なわけだが、解決の糸口を開くという期待から、伊藤氏は現在国会などで議論が進んでいる臓器移植法の見直しの行方を注視しているとも語った。

 臓器移植法が施行以降、2000年4月から2008年12月までに、膵臓移植は54例に留まっている。内訳は、SPKが42例(2例は心停止ドナー;NHBDから)、PAKが9例、PTAが3例となっている。女性30人で男性24人。年齢は、50代18人、40代16人と、これらの年齢層で64.8%に上る。30代は11人、20代は7人、10代と70代が1人ずつだ。なお、54例の待機期間は、平均1035日で、最も短い人で111日、最も長い人で3167日だった。

 一方、移植の成績は、決して欧米に引けをとっていない。

 カプランマイヤー法による患者生存率(n=54)は、死亡が1例あり、1年97.5%、2年97.5%、5年97.5%となっている。グラフト生存率は、膵臓(n=54)は1年86.2%、2年80.6%、5年73.9%で、腎臓(n=42)はそれぞれ92.1%、92.1%、71.0%となっている。たとえば、米国の2000年1月〜2006年12月のデータでは、患者生存率(1年)はPAKで96%、PTAで97%、移植膵臓のグラフト生存率(1年)はPAKで78%、PTAで77%となっている。 

 伊藤氏は、ドナーサイドの問題としては、40歳以上からの提供が65%あり、また脳血管障害(CVA)での提供が59%もある点を強調した。その上で、こうした‘マージナルドナー’に頼らざるを得ない現実にありながら、欧米に匹敵する移植成績を収めていると評価。今後とも、ドナー不足解消には、マージナルドナーや生体ドナーに活路を見出さざるを得ないとの見解を示し、講演を締めくくった。