愛媛大学生体画像応用医学分野(放射線科)の川口直人氏

 冠動脈CT血管造影CTA)に先立ってβ遮断薬を投与し、心拍数を低下させることで、撮影画質を改善でき、被曝線量を約6割低減できたとする研究成果が示された。3月17日まで横浜で開催された第77回日本循環器学会(JCS2013)で、愛媛大学生体画像応用医学分野(放射線科)の川口直人氏らが報告した。

 β遮断薬は心拍数を低下させる効果があり、冠動脈CTAに先立ってβ遮断薬を投与することで、より鮮明な画像が得られることは広く知られている。

 川口氏らは、「コンピュータ断層撮影による冠動脈造影における高心拍数時の冠動脈描出能の改善」を効能・効果とするβ遮断薬であるランジオロールを用い、描出能と被曝線量などの検討を行った。ランジオロールは短時間作用型のβ遮断薬で静注薬として提供されている。血中半減期が約4分と短く、投与後約30分で消失する特性を有する。

 対象は虚血性心疾患が疑われ、2012年3月から同年6月に自院で冠動脈CTAを実施した成人50症例とし、被曝線量、心拍数、血圧、画像品質を評価した。

 対象者の平均年齢は67歳、66%が男性だった。検査前の心拍数が55以上80未満を対象とし、ペースメーカーや植え込み型除細動器使用者や不整脈症例は除外した。撮像用CTとしては、256列マルチスライスCTのBrilliance iCT(フィリップスヘルスケア)を用いた。

 被験者には、ランジオロール0.125mg/kgを1分間で静注し、5分後に冠動脈CTAを実施した。静注後、CTA開始直前の心拍数が65超なら、スキャンモードはヘリカルスキャンとし、65以下ならステップ&シュートスキャンとした。

 ヘリカルスキャンは心拍数が高くても撮影できる半面、被曝線量が多い。これに対し、ステップ&シュートスキャンは低心拍でないと撮影できないが、被曝線量が少ないという特徴がある。

 ランジオロール投与前には50例中29例が心拍数65超だったが、投与後には2例を除く27例が心拍数65以下となり、ステップ&シュートスキャンで撮影された。ランジオロール投与前の平均心拍数は67.2±5.1だったが、投与後には58.8±4.8と、約12.5%有意に低下し(P<0.01)、CTA撮影10〜15分後には62.9±6.6と、ランジオロール投与直後に比べ、有意に上昇した(P<0.01)。

 収縮期血圧は、投与前の120.6±19.1mmHgから投与後には115.0±17.3mmHgに、拡張期血圧は、同様に67.2±10.6mmHgから63.8±8.8mmHgに、それぞれ有意に低下した(ともにP<0.01)。

 ランジオロール投与による心拍数低下で、適用するCTAのスキャンモードが変更された27例では、実際の被曝線量は3.3±0.3mSvだったが、ヘリカルスキャンで撮影した場合の推定被曝線量は8.6±2.0mSvであり、被曝線量を約61%低減できた。

 ステップ&シュートスキャンで撮影した全48例について冠動脈描出能を評価したところ、評価対象とした冠動脈680枝のうち、665枝(97.8%)は診断可能だった。

 これらの結果から川口氏は、「CTAの機種によってランジオロールの有用な適用となる心拍数は異なるが、低心拍症例以外では、画質の向上や被曝線量を目的として、ランジオロール使用を考慮してもよいのではないか」と述べた。


【訂正】
・3月21日に以下の訂正をしました。
 本文第1段落と写真説明で、発表者の所属が「愛媛大学声帯画像応用医学分野」となっていましたが、正しくは「愛媛大学生体画像応用医学分野」でしたので訂正します。