三愛病院循環器内科の那須雅孝氏

 血液透析HD)患者に対するエイコサペンタエン酸EPA)投与は、心血管疾患の罹患率や死亡率を有意に減少させる可能性があることが報告された。2年間追跡の無作為化試験による成果で、三愛病院(盛岡市)循環器内科の那須雅孝氏らが3月17日まで横浜で開催されていた第77回日本循環器学会(JCS2013)で発表した。

 HD患者では血管の石灰化が進みやすく、動脈硬化の進展が早いこともあり、死亡率や心血管疾患の罹患率などが高いことが知られている。一方、EPAは脂質異常症患者の冠動脈疾患や脳卒中のリスク低下に寄与することが既に報告されている。そこで同氏らは、EPAがHD患者における心血管イベントの発生率や死亡率を抑制するかどうかを、前向きオープンラベルの無作為化比較試験により検討した。

 対象は、足関節上腕血圧比(ABI)あるいは画像検査により末梢動脈疾患PAD)と診断されたHD患者とした。なお、出血性疾患の合併、脳卒中発症から3カ月以内、急性冠症候群発症あるいは冠動脈インターベンション施行から1カ月以内、PADに対するインターベンション治療施行から1カ月以内などに該当する患者は除外した。最終的に179例からインフォームドコンセントが得られ、2009年6月〜12月に登録した。

 これらの患者を、EPAを1800mg/日投与する群(介入群、89例)と投与しない群(対照群、90例)に無作為に割り付けた。ベースラインにおける患者背景については、男性比率、年齢、BMI、透析期間、糖尿病・高血圧・心疾患・脳卒中の合併率、服薬中の主な薬剤に、両群間で有意な差はなかった。

 評価項目は、全死亡、心血管死、心血管イベント(急性心筋梗塞、不安定狭心症、脳卒中、大動脈疾患、PADの発症)、心血管死と心血管イベントの複合アウトカムの4つとした。また、追跡期間中にプロトコル違反や転居、有害事象などにより、介入群で13例、対照群で3例が脱落し、最終的な解析対象は介入群が76例、対照群が87例だった。

 2年間追跡した結果、心血管死の累積発生率は介入群が2.6 %、対照群が12.6%、対照群に対する介入群のハザード比は0.20(95%信頼区間[CI]:0.04-0.91、P=0.021)と、介入群の方が有意に低かった。心血管イベントの累積発生率はそれぞれ17.1 %、30.7%、ハザード比は0.50(95%CI:0.26-0.96、P=0.034)であり、心血管死と心血管イベントの複合アウトカムはそれぞれ19.7%、36.4%、ハザード比は0.49(95%CI:0.26-0.90、P=0.018)と、いずれも介入群で有意に少なかった。一方、全死亡の累積発生率はそれぞれ5.3%、13.6%、ハザード比は0.37(95%CI:0.12-1.15、P=0.072)と、有意ではなかったものの介入群の方が少ない傾向が認められた。

 那須氏は本検討の限界点として、オープンラベルの試験であったこと、intention-to-treat(ITT)解析でないこと、透析方法が統一されていなかったことを挙げた上で、「EPAはHD患者の心血管疾患の発症および死亡リスクの抑制に寄与する可能性が示された」と語った。