大分大学循環器内科の岡田憲広氏

 エイコサペンタエン酸(EPA)製剤は心血管イベントの発症リスクを低下させることが示されている。しかし、心血管系の自律神経機能に及ぼす影響については明らかではない。大分大学循環器内科の岡田憲広氏らは、冠動脈疾患患者において、EPA製剤が副交感神経系圧受容器反射感受性(baroreflex sensitivity:BRS)を改善する可能性があることを、3月17日まで横浜で開催されていた第77回日本循環器学会(JCS2013)で発表した。

 同氏らはこれまでに、構造的心疾患のない2型糖尿病患者では、BRSが心血管イベント発症の予測因子であることを報告している。そこで今回は、心血管系の自律神経機能の指標としてBRSを用いて検討を行った。

 対象は冠動脈疾患患者23例で、EPA製剤を投与するEPA群(12例)と投与しない対照群(11例)に割り付けた。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)あるいはバルーンによる拡張術(POBA)の施行から3カ月後をベースラインとした。EPA群にはベースライン以降3カ月間にわたりEPA 1800mg/日を投与し、ベースライン時と投与開始3カ月後にそれぞれホルター心電図検査およびBRS測定を行った。

 患者背景については、年齢、男女比、BMI、血圧値などに両群間で違いはなく、β遮断薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬・ARBといった降圧薬の使用状況にも差はなかった。さらに、血清脂質値やEPA値、アラキドン酸(AA)値、ドコサヘキサエン酸(DHA)値、HbA1c、空腹時血糖値にも有意な群間差はなかった。

 3カ月間におけるEPA値の変化を見たところ、EPA群は49.3μg/mLから177μg/mLに有意に上昇したが(P<0.001)、対照群は50μg/mLから55μg/mLとほとんど変化しなかった。またAA値やDHA値については、EPA群、対照群とも有意な変化は認められなかった。

 心拍変動の指標であるSDNN(心拍間隔の標準偏差)、SDANN(5分ごとの心拍間隔の平均値の標準偏差)、PNN50(隣接する心拍間隔が50msecを超える比率)、心拍変動の周波数領域の指標であるHF、LF/HFなどについても、両群とも有意な変化は確認されなかった。

 BRS値については、EPA値と同じくEPA群でのみ変化が見られ、3.0msec/mmHgから6.0msec/mmHgと有意に増加していた(P<0.05)。対照群は5.72msec/mmHgから5.84msec/mmHgとほとんど変化していなかった。

 今回の結果について岡田氏は、「冠動脈疾患患者では、EPA製剤の摂取によりEPA値とBRS値が上昇した可能性がある。このことは、心血管イベント発症リスクの抑制とEPAが関連していることの理由の1つになるかもしれない」と考察した。