久留米大学心臓・血管内科の甲斐久史氏

 降圧治療中の患者を対象に、アンジオテンシン受容体拮抗薬ARB)/カルシウム拮抗薬CCB)配合剤またはARB/利尿薬配合剤を投与したところ、両剤は早朝および就寝前収縮期血圧の日間変動をほぼ同程度に減少させたことが報告された。「CAVALIER at HOME study」のプレリミナリーデータを、久留米大学心臓・血管内科の甲斐久史氏が、3月17日まで横浜で開催されていた第77回日本循環器学会(JCS2013)で発表した。

 これまでの報告から、血圧変動が増大すると心血管イベントが増加するといわれている。とくに「早朝高血圧」や起床前後の急激な血圧上昇を指す「モーニングサージ」が脳卒中あるいは心筋梗塞などの心血管イベントリスクを上昇させることが知られている。また、家庭血圧において早朝収縮期血圧の日間変動が大きくなると全死亡や脳卒中が増加することや、受診日間の血圧変動が増すと脳卒中発症のハザード比が上昇することなども報告されている。しかし、これまでに家庭血圧の日間変動が与える影響について、前向きに検討した研究はなかった。

 そこで、甲斐氏らは、厳格な降圧治療が日間血圧変動を減少させることができるかという点のほか、血圧変動を減少させる上で最適な降圧薬の組み合わせについて検討するため、オープンラベルの前向き試験を実施した。

 対象は、降圧薬で治療中の20歳以上の高血圧の外来患者で、前観察期間中(約1カ月間)に診察室随時血圧または家庭血圧(早期または就寝前に測定)が降圧目標値(JSH2009)を達成できなかった患者とした(外来随時血圧が140/90mmHg以上、糖尿病、腎障害、陳旧性心筋梗塞は130/80mmHg以上、家庭血圧が135/85mmHg以上)。コントロール不良の高血圧(拡張期血圧120mmHg以上)や糖尿病(HbA1c値が9.0%以上)、痛風の既往、腎障害、肝障害患者などは除外した。

 患者をARB+ヒドロクロロチアジド(HCTZ)配合剤(カンデサルタンシレキセチル8mg/HCTZ6.25mg)またはARB+CCB群(カンデサルタンシレキセチル8 mg/アムロジピン5mg)の2群に割り付けた。各群の目標登録数は500例ずつとし、登録期間は2011年5月1日〜2012年6月30日、追跡期間は2011年5月1日〜2012年12月31日だった。

 毎日、早朝起床時と就寝前に家庭血圧と脈拍測定を行い、治療6カ月後まで測定した。また、採血と採尿は投与開始前と投与6カ月後に行った。

 主要評価項目は、投与6カ月後の早期および就寝前の家庭血圧測定における収縮期血圧の日間変動性(標準偏差[SD]と変動係数[CV])。副次評価項目は、安全性(服薬中止率、有害事象発生)、早期および就寝前収縮期血圧の降圧度、外来収縮期血圧の降圧度。日間血圧変動性は、最終来院日直前に測った7つ以上の血圧値から算出した。

 今回は、投与6カ月後の血圧データがそろっている患者928人のデータをプレリミナリーデータとして発表した。ARB+HCTZ群が446人、ARB+CCB群が482人だった。

 両群間の患者背景を見ると、尿酸値のみ有意差があり、ARB+HCTZ群が5.51mg/dL、ARB+CCB群が5.73mg/dLだった。平均年齢は68.0歳、男性割合が53.7%、BMIが24.1kg/m2、糖尿病は19.4%、脂質異常症は42.4%、冠動脈疾患は9.3%だった。

 登録前の降圧薬の服薬状況は両群間に差はなく、全体でARBは85.5%(単剤使用は53.5%)、ACE阻害薬は2.8%(単剤使用は0.6%)、CCBは33.0%、β遮断薬は12.3%、α遮断薬は1.4%、サイアザイド系利尿薬は5.7%だった。登録前の血圧に有意差はなく、全体の平均外来収縮期血圧は150.5mmHg、平均早朝収縮期血圧は147.1mmHg、就寝前収縮期血圧は138.8mmHgだった。

 6カ月間の家庭血圧測定遂行率は、84.5%だった。

 主要評価項目の早朝収縮期血圧の変動に対する影響を見ると、血圧変動のばらつきを示すSDはARB+HCTZ群が−1.27mmHg、ARB+CCB群が−1.46mmHg、変動係数(CV)はそれぞれ−0.30 %、−0.39%となり、両群間に有意差はなかった。同様に、就寝前収縮期血圧については、ARB+HCTZ群のSDが−1.18mmHg、ARB+CCB群が−2.01 mmHg、CVはそれぞれ−0.30 %、−0.85 %となり、有意差が見られなかった。

 さらに、副次評価項目である投与6カ月後の外来収縮期血圧への効果では、ARB+HCTZ群が−17.0 mmHg、ARB+CCB群が−20.4 mmHgで、両群間に有意差はなかった。家庭血圧については、両群ともに治療開始前の早朝収縮期血圧は約147mmHg、治療6カ月後は133〜134mmHgとなり、ARB+HCTZ群の血圧変化量は−13.1mmHg、ARB+CCB群は−14.0 mmHgだった。就寝前収縮期血圧の変化量はそれぞれ−12.0mmHg、−12.3mmHg(両群ともに治療開始前は約138mmHg、治療6カ月後は約126mmHg)と有意差はなかった。

 服薬中止率は全体で2.6%だった。服薬中止理由が「副作用」だった患者の割合は、ARB+CCB群が0.6%だったのに対し、ARB+HCTZ群が1.6%と若干高かった。

 ARB+CCB群で原因不明の死亡が1人見られたが、有害事象は軽度のものが多く、最も多く発現した有害事象は気分不良・めまい・頭痛・動悸(9.7%)だった。ARB+HCTZ群での特徴的な副作用として、光線過敏症・皮疹を挙げ、ARB+CCB群で0.4%に対し、ARB+HCTZ群で1.1%だったと説明した。

 これらの結果から甲斐氏は、「厳格な降圧治療は、早期および就寝前の血圧変動性を減少させた。ARB+HCTZ群、ARB+CCB群の血圧変動性作用はほぼ同程度と示唆されたが、今後、層別解析や交絡因子を調整するなどさらなる解析が必要」と語った。また、血圧変動性に対する治療介入が、心血管イベント発症リスクの抑制につながるかについては検討が必要とした。