神戸大学内科学講座循環器内科分野の森健太氏

 日本人の冠動脈疾患患者を対象に、トランス脂肪酸TFA)の血中濃度を測定した結果、血清TFA濃度は冠動脈疾患のリスク因子である可能性が示された。また、年齢が若いほど、血中TFA濃度が高くなる傾向が見られた。神戸大学内科学講座循環器内科分野の森健太氏が、3月17日まで横浜で開催されていた第77回日本循環器学会(JCS2013)で発表した。

 TFAは、トランス型の二重結合を持つ多価不飽和脂肪酸で、マーガリンやショートニングなどに多く含まれる。TFA摂取量が多い欧米では、TFAが心疾患リスクを高めることが報告されていることから、摂取上限量が設定されたり、食品への含有量表示が義務付けられるなど、TFAを規制する動きがある。一方、日本では、欧米ほどTFAの摂取量が多くないと言われており、摂取量に制限がないほか、冠動脈疾患との関係を検討した報告は少ない。

 そこで森氏らは、冠動脈疾患の有無別に血清TFA濃度を測定し、TFA測定の意義について検討した。

 対象は、2008年7月から2012年3月に神戸大学病院に入院した902人。冠動脈疾患あり(治療中)群は463人、冠動脈疾患なし群は439人だった。メタボリック症候群(MetS)あり群は318人、MetSなし群は584人。年齢は4分位で分けた上で解析した。血清TFA濃度は、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)で測定し、リポ蛋白あたりのTFA濃度を算出した。

 患者背景を見ると、平均年齢は、第1分位(59歳未満)が48.40歳、第2分位(59歳以上、67歳未満)が62.94歳、第3分位(67歳以上、75歳未満)は70.76歳、第4分位(75歳以上)は78.70歳だった。総コレステロール値はそれぞれ187.3 mg/dL、178.7 mg/dL、177.6 mg/dL、164.2 mg/dL、LDLコレステロール値は110.4 mg/dL、105.1 mg/dL、104.5 mg/dL、96.3 mg/dL、トリグリセライド(TG)は、146.7 mg/dL、136.6 mg/dL、117.2 mg/dL、107.1 mg/dLとなっていた。

 解析の結果、年齢が上がるとともに血中TFA濃度は低下した。男女間に有意差はなかった。 

 冠動脈疾患リスク因子である「BMI」、「ウエスト周囲径」とTFA濃度との関係を調べると、有意な正の相関関係が見られた(それぞれR=0.2059、R=0.1561)。同様に、各リポ蛋白とTFAとの間にも有意な相関関係が確認され、LDLコレステロール、TG、アポリポ蛋白B48は、TFAと正の相関(R=0.26、R=0.52、R=0.28)、HDLコレステロールは負の相関関係が見られた(R=−0.105)。

 また、冠動脈疾患あり群のTFA濃度は、冠動脈疾患なし群と比べ、有意に高かった(P<0.05)。同様に、MetSあり群のTFA濃度は、MetSなし群よりも有意に高いことが示された(P<0.05)。

 年齢を4分位で分けた上でTFA濃度を検討すると、第1分位(59歳未満)、第2分位(59歳以上、67歳未満)においてのみ、冠動脈疾患あり群のTFA濃度は、冠動脈疾患なし群と比べ、有意に高かった(いずれもP<0.05)。さらに、冠動脈疾患あり群においては、年齢が若い群ほどTFA濃度が高い傾向が確認された。

 同様に、MetSの有無別にTFA濃度をみると、第1分位(59歳未満)、第2分位(59歳以上、67歳未満)、第3分位(67歳以上、75歳未満)のそれぞれにおいて、MetSあり群のTFA濃度は、MetSなし群に比べ、有意に高かった(いずれもP<0.05)。さらに、Metsあり群においては、年齢が若い群ほどTFA濃度が高かった。

 これらの結果を踏まえ森氏は、「血清TFA濃度は、日本においても冠動脈疾患のリスク因子であることが示された。これまで、日本人はTFA摂取量が少ないと言われていたが、冠動脈疾患がある人やメタボリック症候群の人では、年齢が若い人ほどTFA濃度が高いことが分かった。MetSの人は冠動脈疾患を発症しやすいため、TFA摂取量を制限する必要があると考えられる」とまとめた。

 若年者においてTFA濃度が高かった原因としては、「TFAは生体内では合成されない物質のため、食物からの摂取したことが原因と考えられる。若年者における食生活の欧米化が主に影響したのではないか」とコメントした。

 今後の検討課題として森氏は、「日本人、とくに若い世代において、TFA摂取量がどの程度あるのか検討することで、食事指導などにより冠動脈疾患の予防につなげることが可能になる」とした。