日本医科大学循環器内科の高橋啓氏

 エイコサペンタエン酸(EPA)は、血清脂質低下作用抗血小板・抗炎症作用を介して、動脈硬化性疾患の発症を抑制すると考えられている。しかし、EPAによる動脈硬化の進展抑制血管保護のメカニズムについては、十分に解明されていない。日本医科大学循環器内科の高橋啓氏らが、24週間のEPA投与が血管内皮機能に与える影響を検討したところ、急性心筋梗塞(AMI)患者の血管内皮機能を有意に改善しただけでなく、心血管イベントを有意に減少させたことが分かった。3月15日から17日まで横浜で開催されていた第77回日本循環器学会(JCS2013)で報告した。

 今回の検討では、非侵襲的な血管内皮機能測定装置であるEndo-PAT2000を用いた。上腕駆血開放後の血管拡張反応を指尖脈波の変化で捉え、それを数値化したRH-PAT(reactive hyperemia-peripheral arterial tonometry)indexによって血管内皮機能を評価した。

 対象は、同科で2012年12月以降に入院し、発症1週間以内の新規のAMI患者42例。これらの患者を、EPAを1800mg/日投与する群(投与群、22例)と投与しない群(非投与群、20例)に無作為に割り付けた。

 両群の患者背景に関しては、男女比、年齢、心イベントの家族歴、喫煙、高血圧・脂質異常症・糖尿病の合併率、梗塞部位、左室駆出率(EF)などで有意な差はなかった。スタチン、β遮断薬、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬の処方率にも、両群間で差は認められなかった。

 スタチンはベースライン前から全例に投与されており、試験開始後もそのまま継続した。ベースラインにおけるRH-PAT indexは投与群が1.28±0.26、非投与群が1.26±0.22で、両群間に有意差はなかった。24週後にはそれぞれ1.63±0.28、1.32±0.34と、投与群で明らかな増加が認められ、非投与群より有意に高かった(P=0.02)。これについて高橋氏は、「当施設で検査した健常成人20例のRH-PAT index の平均値は1.82±0.35だった。EPAの効果は高いのではないか」と述べた。

 炎症マーカーである高感度CRP(hsCRP)については、ベースラインでは投与群が0.32±0.09 mg/dL、非投与群が 0.34±0.12 mg/dLと、両群間に差は認められなかった。24週後にはそれぞれ0.22±0.08 mg/dL、0.35±0.09 mg/dLと、投与群で明らかに減少し、非投与群より有意に低かった(P<0.01)。

 次に、投与群の個々の患者においてRH-PAT indexとhsCRPのそれぞれの改善率を検討したところ、有意な正の相関が示された(R=0.86、P<0.001)。

 24週間における心血管イベント発生率は、投与群が5%(AMI再発が1例)、非投与群が15%(AMI再発が2例、不安定狭心症が1例)と、投与群で有意に少なかった(P<0.01)。

 以上の結果から高橋氏は、「EPA投与は血管内皮機能を有意に改善し、炎症も抑制した。心血管イベントが少なかった理由として、それらが寄与した可能性もある。この結果を踏まえれば、AMI発症後はできるだけ早期からEPAを投与するべきではないか」との見解を示した。